【2月4日 AFP】オーストラリアに生息していたフクロオオカミ(別名:タスマニアタイガー)の絶滅について研究している豪アデレード大学(University of Adelaide)の研究チームは、絶滅の原因は病気ではなく人間にあったとする研究結果を英科学誌「ジャーナル・オブ・アニマル・エコロジー(Journal of Animal Ecology)」に発表した。

 豪州南部のタスマニア(Tasmania)島に欧州から移民がやってきた1803年にはまだ多くのフクロオオカミがこの島に生息していた。生存が確認された最後のフクロオオカミは同島のホバート(Hobart)にあった動物園で飼育されていたが1936年9月に死んだ。以降、野生での未確認の目撃情報はあるものの1986年に公式に絶滅が宣言された。

 フクロオオカミの絶滅は長年、犬の伝染病ジステンパーに似た病気に関係があるとされてきたが、今回、研究チームは病気が主要因ではないことを証明したと発表した。

 論文の主著者であるトーマス・プラウズ(Thomas Prowse)氏は「懸賞金がかけられた駆除だけではフクロオオカミは絶滅しなかったはずだとして未知の病気の流行に絶滅の原因があると考える人は多いが、われわれは謎の病気を持ち出さなくても1905年以降に起きた個体数の激減も含め、フクロオオカミの絶滅をシミュレーションできることを発見した」と語っている。

 研究チームは複数の動物が接触した際の新しいモデルを用い、1830年から1909年にかけてフクロオオカミの駆除に懸賞金がかけられたことも含め、欧州から到来した牧羊業がフクロオオカミにどのような影響を与えたのか多面的に調べた。

「人間による捕獲や移民が連れてきた何百万頭ものヒツジとの競争によってカンガルーやワラビーといったフクロオオカミの餌になる動物が減少したことによる間接的な影響を考慮したのもわれわれの研究の重要な点だ。われわれは欧州からの移民による負の影響はあまりに大きく、伝染病がなかったとしてもフクロオオカミは絶滅を免れなかっただろうということを示した」

 フクロオオカミは体は大型犬、頭はオオカミに似た肉食の有袋類で、背中にトラのようなしま模様があり、性格は用心深い。かつてはオーストラリア大陸からニューギニアにかけて広く生息していた。タスマニア島以外では、ディンゴ(野生のイヌ)がフクロオオカミ絶滅の要因となったと考えられている。(c)AFP