【2月2日 AFP】重傷を負ったわが子の命をつなぎとめるため、青いビニール製ポンプを何年も押し続けてきた王蘭芹(Wang Lanqin)さんは、今日もその荒れた手でポンプを握り、息子が横たわるベッドの脇に座る。

 王さんと付敏足(Fu Minzu)さん夫婦は、オートバイ事故で体がまひした息子の付学朋(Fu Xuepeng)さんを病院に入れる経済的余裕がなかったため、交代でこの器具を押して息子の呼吸を補助してきた。メディア報道によれば、2年間にわたり1日何千回とポンプを押してきたせいで、夫婦の手は変形してしまった。だが、親戚の助けを借りて自家製の人工呼吸器を作ってからは負担が減ったという。

 写真には、重しで押さえた木の机に置かれた、錆びや油染みがついた機械が写っている。プラスチックの牛乳瓶が使われている本体は、横たわる学朋さんとチューブでつながっている。学朋さんの頭には、冷えないようにと、赤い帽子がかぶせられている。

 自家製呼吸器ができてからも、夫婦は電気代を節約するために日中は交代で器具を押している。24時間の介護も必要だ。23歳の時に事故に遭った学朋さんは、体は動かないが意識はある。

 これらの写真が中国のメディアで広く報じられると、中国東部・浙江(Zhejiang)省黄岩(Huangyan)区の村に住む夫婦の元には巨額の寄付が舞い込んだ。現金に加え、北京(Beijing)の企業からは新式の人工呼吸器も贈られた。

 中国当局はこの10年間で健康保険制度を広く拡大し、農村部もその対象になっているものの、給付額は少なく、重症患者や慢性疾患の患者は医療費を家族に頼らざるを得ない。

 夫の敏足さんは国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)に、夫婦共々「あきらめようと思ったことなど1秒たりともない」と語った。「わずかでも生きるチャンスがある限り、わが子の命をあきらめる親などいないでしょう」

(c)AFP