【1月30日 AFP】フランス文化省は29日、パリのオルセー美術館(Musee d'Orsay)が今月26日、反貧困団体の招待で訪れた家族に退出を求めたことについて、同美術館に説明を要求した。

 オルセー美術館側は、他の来館者から「臭う」という指摘があったため、外に出るよう促したという。仏文化省は同美術館の館長に対し、オレリー・フィリペティ(Aurelie Filippetti)文化・通信相宛てに詳細な説明を送るよう求めている。

 退出を迫られたのは貧困家庭の夫婦と12歳の子どもで、家族を招待した国際NGO「ATD第4世界(ATDカールモンド、ATD-Quart Monde)」は美術館側の対応を「あからさまな差別」だと批判している。

 ATDの広報担当者は「これは最貧層の人々が日々耐えなければならない状況を表している。貧しく見えれば、他の人たちと同じ扱いは受けない。香水がプンプン匂う女性が出て行けと言われることはないし、絵の前でうんちくをたれる人がいても誰も警備員を呼んだりしないのに」と訴えた。

 この広報担当者によると一家は初め、ゴッホ(Van Gogh)の作品が展示されている部屋にいたが、「臭いが他の来館者の迷惑になっている」と言われ、部屋から出るよう求められた。そして、より人の少ない場所に移動したが、すぐに4人の警備員に取り囲まれ、出口へ連れて行かれたという。ATDでは「ボランティアが同行していたが、家族にそれ以上、屈辱的な思いをさせないため、その場では騒ぎにはしなかった」と説明している。

 一方、オルセー美術館はこの件について「深い遺憾の意」を表明し、印象派の作品を数多く所蔵する同美術館が実施している社会奉仕事業の方針にも反していると強調した。昨年はこのプログラムによって140組が招待を受けているという。また美術館側は、一家の入場料は返金したとも付け加えた。(c)AFP