【1月30日 AFP】沖縄県・尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島、Diaoyu Islands)の領有権をめぐり沸騰している日中間の対立について懸念が膨らむ中、両国の研究者が過熱状態を冷まそうと、米ワシントンD.C.(Washington D.C.)で共通の見解を探る会合を開いた。

 研究者たちは、東シナ海の領有権をめぐる日本と中国の認識には大きな違いがあることを認めながら、基本的な一点で共通点を見いだした──両国とも対立が戦争へと激化することは望んでいないという点だ。

 米国を拠点とする日中の研究者2人が呼び掛け人となり、中国から4人、日本から3人の専門家が27日に集った。両者は終日、尖閣諸島をめぐるそれぞれの見解に耳を傾け合った。

 中国側の呼び掛け人、ウッドロー・ウィルソン国際学術センター(Woodrow Wilson International Center for Scholars)の公共政策学者、汪錚(Zheng Wang)氏は両者の間に「大きな認識のずれ」を認めた。アジアの二大経済大国における国家主義の高まりによって、指導者たちは「弱腰」とみられる行動をとることが困難になっていると言う。「どちらの側も自分たちを被害者とみなし、相手を侵略者とみなしている。『彼らは現状を変えるために攻撃的な行動をとるが、われわれは平和を愛する国だ』といった具合だ」と汪氏は述べる。

 中国も日本も、豊富な資源が見込まれる東シナ海の領有権を主張し、歴史的な論拠を提示している。米国は決定的な立場は明確にしていないが、日本に施政権があるとの認識を示している。2010年と12年の事件は、米国と同盟関係にある日本と、台頭する中国の間の緊張を一気に高めた。昨年の中国では、同国に珍しい街頭デモで反日が掲げられた。

 ワシントンでの会合には政府関係者は参加しなかったが、出席者は個人的な範囲で提起を行った。

 日本側の呼び掛け人で、紛争解決を研究するジョージ・メイソン大学(George Mason University)のアライ・タツシ(Tatsushi Arai)客員研究員は「一致にせよ、不一致にせよ、平和的手段を通じて」そこに至るべきだと主張する。

 同氏が提示する選択肢は3通りある。日本政府は尖閣諸島に領有問題は存在しないと主張しているが、これを変え、日本の主権を確認しながら中国の立場も認めること。逆に、中国が自国の主張を守りつつ、日本の立場を認めること。または両者共に違いを認めること。その後に両国は海域における行動規範を策定可能だと言う。どの選択肢をとっても「日本側は自国の領有権を譲歩せずに済むし、中国側もそうせずに済む。ただ、互いに一致しないという点で一致する」

 ウィルソンセンターの上級研究員である朝日新聞記者の福田伸生(Nobuo Fukuda)氏は、尖閣諸島周辺海域の石油の共同試掘を提案する。石油を発見すれば、日中共同開発を協議する機会となる。「もしも石油が発見されなければ、この問題はなくならないかもしれない。だが、定期的に協力した経験は将来の状況を助けるだろう」と言う。日中は2008年に東シナ海ガス田の共同開発でいったん合意に達したが、決定した内容をめぐって対立したまま進展していない。

 今回の会合の設定に協力したウィルソンセンター・アジア・プログラムの主任ロバート・ハザウェー(Robert Hathaway)氏は、尖閣問題は依然複雑なままだが、制御不能の状況になるに任せるのは「最大の愚行」だという点で全員が一致したと述べた。(c)AFP/Shaun Tandon