【1月29日 AFP】韓国からネパール、ベトナムまで、カジノ産業がアジア各地で急成長している。これらのカジノは賭け事を楽しみたい人が誰でも遊ぶことができる場所だ――自国民以外なら。

 アジアの国々にとって、カジノギャンブルには経済的恩恵と社会的損害のジレンマがある。そのため、一部の国は外国人限定のカジノをオープンさせるという解決策をとった。

 急速な発展により、人びとがぜいたくなレジャー活動を楽しむようになったアジアにおいて、カジノ開設の利点は明白だ。

 カジノは安定した外貨獲得源になり、中国本土の浪費家らの観光を促し、地元経済を成長させる。

 今や世界最大のギャンブルの中心地であるマカオの2012年のカジノ収入は、前年と比べて13.5%増え、過去最高の380億ドル(約3兆5000億円)を記録した。

 一方、ギャンブル依存症や家庭崩壊、高利貸しといった犯罪活動など、ギャンブルの社会的影響も十分に裏付けられた。

 そのため、一部のアジアの国々はカジノの利益を享受しようとカジノを開設した上で、自国民の入場を禁止、または厳しく規制している。

 韓国文化体育観光省のキム・ジンゴン観光部長は、韓国人はギャンブル依存症に特に陥りやすいという考え方が、広く共有されていると語る。

■韓国人が唯一遊べる国内カジノは超満員

 韓国は自国民のカジノ利用を全面的に禁止してはいない。登録カジノ17か所のうち1か所、江原ランドカジノ(Kangwon Land Resort)のみ、韓国国民に開放されているのだ。

 同カジノは、ソウル(Seoul)から数百キロメートル離れた、高速バスで3時間かかる山間部にある。平日夜にサラリーマンが遊びに来るのを防止するのが狙いだ。

 だが「特急タクシー」が高速バスの半分の時間での移動を可能にしており、その来場者数や収益の統計は、韓国人が賭け事に依存しやすいという説を裏付けている。

 江原ランドカジノの来場者数は1日平均1万人。カジノの全座席数のおよそ5倍の人数だ。収入は2011年に1.2兆ウォン(約1000億円)に上り、外国人限定の残り16カジノの合計収入よりも多かった。

 カジノ利用者にIDカードの提示を求め、月間15日を超える来場を禁止し、賭け金の上限も30万ウォン(約2万5000円)に制限しているにもかかわらず、この盛況ぶりだ。

 江原ランドカジノの混雑ぶりから、他のカジノも韓国人に開放するよう求める声が上がっている。だが韓国政府は、同カジノは景気低迷に苦しむ地域の活性化のために行われた1か所限りの限定プロジェクトであるとして、この要求を拒否している。

 観光部のキム部長は、主要都市にあるカジノなどを国民に開放すれば、市民が殺到することになると忠告した。

■カジノは隣国で、ベトナムとカンボジア

 ネパールとベトナムのカジノは外国人限定だ。

 だが、ネパールでは規則の違反も多いという。ベトナムには韓国の江原ランドカジノのような場所はないが、隣のカンボジアには、ベトナムとの国境沿いに巨大なカジノがあり、ここの来場者はほぼ全員がベトナムからの観光客だ。

 一方のカンボジア人も例に漏れず、自国のカジノを利用することは禁止されている。だがベトナムのカジノは利用可能だ。

■シンガポールは失業者らの入場を禁止

 シンガポールでは市民のカジノ利用を禁止してはいないが、入場者に特別の条件を定めている。高額な入場料を設定して低所得層の入場を抑制し、過去に自己破産した人や、国から長期の生活支援を受けている人も入場ができない。

 だが2011年の政府調査で、大金を賭ける低所得者層が増えていることが明らかになり、昨年6月にはさらに失業者や短期の生活支援を受けている人も入場が禁止された。

 シンガポールのカジノ2か所はいずれも商業的には大成功で、2011年の収入は50億ドル(約4500億円)に上った。

■カジノ禁止国でも議論活発化

 各国のカジノ産業の活況を受けて、日本のような国々でもカジノ合法化の議論が活発になっている。現在、カジノで遊びたい日本人は韓国かマカオ、シンガポールなどに行かなければならない。

 また、台湾では昨年7月、本島から離れた馬祖(Matsu)島の住民が台湾初の合法カジノの開業を支持する住民投票を行った。

 このカジノ、開業した場合には誰でも遊べるようになるだろう――おそらく、馬祖島住民以外なら。(c)AFP/Giles Hewitt