【1月21日 AFP】「お前たちはアルジェリア人でイスラム教徒だから、心配は要らない。われわれが探しているのはキリスト教徒だ。マリやアフガニスタンでわれわれの兄弟を殺害したやつらだ」──。アルジェリア南東部イナメナス(In Amenas)の天然ガス関連施設で発生した人質拘束事件の生存者のアルジェリア人たちの証言によると、武装勢力はそう叫んだという。

 16日未明に発生した事件は、最近まで「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(Al-Qaeda in the Islamic MaghrebAQIM)」の幹部だったモフタール・ベルモフタール(Mokhtar Belmokhtar)司令官率いるイスラム武装勢力「イスラム聖戦士血盟団(Signatories for Blood)」のメンバー30人以上により実行されたとみられている。

■日本人犠牲、日揮スタッフの生々しい証言

 日本のプラント建設大手、日揮(JGC Corporation)のアルジェリア人スタッフ、リアドさんは、空港へと向かっていたバスが襲撃され、同乗していた日本人の同僚3人が殺害されたときの様子を次のように語った。

 「午前5時30分ごろ、銃撃音が聞こえた。逃げようとした3人の日本人の同僚が(武装勢力に)殺されたのを見て、みんな震え上がった」。実行犯らはその後、リアドさんらを乗せたままバスをガス施設の居住区へと向かわせたが、そこではアルジェリア人と外国人数百人が人質になっていたという。

 「テロリストの1人が『ドアを開けろ!』と強い北米なまりで叫んで、発砲した。そこで、さらに2人の日本人が殺された。施設内でも別に4人の日本人の遺体を発見した」。リアドさんは込み上げる感情に言葉を詰まらせながら証言した。

 襲撃現場の映像や写真は公式には発表されていないが、AFP記者は人質たちが撮影した写真を確認した。銃撃された生々しい犠牲者たちの姿が写されており、中には衝撃で頭部が大きく損傷した遺体もあった。「彼らは残忍に処刑されたんだ」と、やはり人質になっていたアルジェリア人のブラヒムさんは震えながら話した。

 事件発生からの数日間を、人質たちは首に爆弾を巻かれて過ごした。実行グループのアブドゥルラフマン・ニジェリ(Abdul Rahman al-Nigeri)指揮官は、いつでも爆破させる用意があると人質たちを脅したという。

 また別のアルジェリア人生存者によると、実行犯らは英国人の人質の1人に対して、英語で同僚に呼び掛けるよう強要。この男性が「出て来なさい、彼ら(武装勢力)はあなたたちを殺さない。彼らが探しているのは米国人だ」と叫んだ数分後、男性の爆弾を起爆させて殺害したという。

■内通者がいた?

 イナメナスのプラントを共同操業していた英石油大手BPの現地スタッフ、アブデルカデルさんは、施設出入口で数人の同僚と警備に当たっていた。そのとき、1台のジープがゲートを突破してきて、甲高いブレーキ音を立てて止まった。ジープには武装勢力7人が乗っていて、アブデルカデルさんらの携帯電話を取り上げ、防犯カメラを壊した。

 武装勢力の1人は、こう言ったという。「お前たちはアルジェリア人でイスラム教徒だから、何も怖がることはない。われわれが探しているのはキリスト教徒だ。マリやアフガニスタンでわれわれの兄弟を殺害し、資源を略奪するやつらだ」。その後、警備員の1人が足を撃たれ、プラント内を先導させられていった。アブデルカデルさんは4児の父親なんだと嘆願したところ解放されたという。

 人質たちは、実行犯らがサハラ砂漠の真ん中にある広大なイナメナスの施設について「非常に詳細に知っていた」と口をそろえている。リアドさんによると、実行犯らは施設内部のさまざまな手続きや外国人スタッフの部屋番号を把握しており、BPと日揮のスタッフ居住区を狙って襲撃してきたようだという。

 「内部に共犯者がいたんだ」と、リアドさんは話した。

 リアドさんたち日揮のアルジェリア人スタッフらは17日、アルジェリア軍特殊部隊と武装勢力との銃撃戦の間を縫って脱出に成功。武装勢力の襲撃を免れていたイタリア企業の居住施設へ逃げ込んだ。その後、アルジェリア軍によってBPの居住区が解放されてから日揮のスタッフが拠点としていた区域に荷物を取りに戻ると、武装勢力7人の遺体と、ベッドの下に隠れてぼうぜんとしているマレーシア人の同僚1人を発見したという。(c)AFP/Amal Belalloufi