【1月19日 AFP】ロシア・ボリショイ劇場(Bolshoi Theatre)のバレエ芸術監督セルゲイ・フィーリン(Sergei Filin)氏(42)が17日夜、モスクワ(Moscow)中心部の自宅近くで何者かに酸性の液体を顔にかけられる事件が起きた。バレエ団の内部抗争が犯行の原因とみられている。

 フィーリン氏は命に別状はないものの、顔や頭部、目に第3度の重いやけどを負い、失明の恐れがあるため現在懸命の治療が行われている。18日には視力を保持するための緊急手術が行われた。

 露テレビ局Ren-TVは、顔のほとんどを包帯で覆われたフィーリン氏の病室でのインタビュー映像を放送。フィーリン氏は事件当時について、マスクをしてフードをかぶった人物に追いかけられ、襲われたと語った。

 警察によれば、犯人は現場から逃走した。容疑者はまだ特定されていない。

 フィーリン氏はかつて高い評価を受けていたダンサーで、2011年にボリショイ・バレエ団の芸術監督に抜てきされた。警察と劇場関係者は、フィーリン氏が仕事関係の恨みを買ったことが事件の原因とみている。これまでにはウェブサイトや電子メールがハッキングされ、車のタイヤがパンクさせられるなどの嫌がらせを受けていたという。

 旧ソ連時代のボリショイ・バレエでは、バレリーナたちがライバルのトウシューズにガラスの破片を入れていたこともあり、関係者からは「倫理の欠如」が今回の事件につながったと指摘する声も上がっている。(c)AFP/Maria ANTONOVA