【1月21日 AFP】フランスの議会では今月末、同性カップルにも結婚を認める法案の是非が問われる予定だが、同国の同性愛者の中には、より寛大なカナダ・ケベック(Quebec)州でとうの昔に安住し、たとえ母国で同性婚が認められようとも、戻る理由が見当たらないと言う人々もいる。

「パートナーには、『フランスには絶対に戻らないから』と言ってあります」と語るのは、お腹の中にいる娘の誕生を待ちわびるアリス・クレティエン(Alice Chretien)さんだ。ゲイ(男性同性愛者)の友人からの精子提供を受けて妊娠した。

「ケベックに来て、モントリオール(Montreal)という街と出会いました。そして私のパートナーにも。ここではレズビアン(女性同性愛者)カップルとして日々暮らすこと、そして子どもを持つことでさえもが、どんなに楽であるかに気付いたんです」

 住民の大多数がフランス語を話すここケベック州で暮らし始めて3年半。母国に対する愛着は残っているものの、フランスでまた暮らすことは想像ができないという。

 クレティエンさんをはじめ、フランス出身のゲイやレズビアンたちは、ケベック州と比べて母国は不寛容だと話す。その根拠として、同性カップルの結婚と養子縁組を認める法案に反対するデモに、数十万人もの人々が参加したことを挙げている。同法案は、フランス議会で今月29日に審議が開始される予定だ。

■フランスの同性愛カップルの安息の地ケベック

 10年ほど前に同性婚が合法化され、同性カップルの養子縁組も広く受け入れられるようになったケベック州は、フランスのゲイやレズビアンにとって安息の地となった。

 モントリオールを拠点とする支援団体「LGBT家族連合(LGBT Family Coalition)」のモナ・グリーンバウム(Mona Greenbaum)代表によると、ケベック州はここ3~4年、フランスから非常に多くの同性愛者が移住しているという。「多くは家族を作るためでしたが、ケベックの神秘的な魅力や広大な土地、フランスの厳しい経済事情なども追い風となっています」

 2011年の統計では、カナダに住む同性カップルは6万4575組と、01年からほぼ倍に増えた。うち2万1015組が結婚関係にあるカップル、残りは事実婚のカップルだ。フランスから移住した人びとは、カナダ人との結婚によって恒久的に滞在期間を延長することができる。

 ひげが生えた口を大きく開いた笑顔を見せる40代のローラン・グロアゲン(Laurent Gloaguen)さんは、ケベック出身のイブ(Yves)さんと1997年にインターネット上で出会った。はるばる大西洋を渡ったのは、「愛する男性のためで、国のためではない」と言う。

 イブさんはローランさんと一緒になるためにフランスに渡ったこともあるが、就業許可を得ることは最後までできなかったという。

「私たちは安定した関係を築いていた。フランスでは反同性愛的な扱いこそ受けなかったが、この関係を続けることはできなかった。ここ(カナダ)では、私に借り一つない国が、私を温かく迎えてくれた」と語るローランさん。

「それで(移住を)決めたんです。ケベックは私が望む人生を、私に与えてくれました」

 ローランさんとイブさんは2006年、モントリオールの役所で挙式した。白のフリルが付いた服を着た裁判官が執り行った10分間の式では、ケベック出身の歌手クレモンス・デロシェ(Clemence Desrochers)が歌うラブソングが流された。「もしあなたがあと数か月一緒にいてくれるなら、私はこの夏、庭で草花を育てましょう」

 その後、2人は家を買い、ローランさんはビンテージ写真を制作する小さな事業を始めた。(c)AFP/Michel Viatteau