【1月16日 AFP】他者と何かを分かち合おうとする意思を試す実験でチンパンジーが驚くほどの公平性を示したとの研究結果が、今週の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に掲載された。研究チームによればチンパンジーに公平性があると確認されたのはこれが初めてで、平等という概念を持つのは人間だけだとの考え方が誤っていることが証明されたとしている。

 実験は、米エモリー大学(Emory University)ヤーキス国立霊長類研究センター(Yerkes National Primate Research Center)がジョージア州立大学(Georgia State University)と共同で実施。研究に参加したフラン・デワール (Frans de Waal)氏によると、経済学で使われる心理実験「最後通牒ゲーム」を、2~7歳の人間の子ども20人のグループと、成体のチンパンジー6匹のグループで別々に行った。

 いわゆる「最後通牒ゲーム」は2人1組の片方が一定の金額の分配案を提示し、もう一方が提案を受け入れるかどうかを答えるものだが、今回の実験では2色のメダルを使用。ペアの片方にどちらかの色を選ばせ、もう一方の協力があれば報酬に変えられるというルールを適用し、選んだ色の種類によって報酬をペアの両方に平等に分けるか、選んだ本人に多めに報酬を与えるかを決めた。報酬は子どもにはステッカー、チンパンジーにはスナック菓子を与えた。

 すると、人とチンパンジーで実験結果に違いは見られず、ペアで協力する必要がある時にはチンパンジーも人も報酬を等しく分け合った。デワール氏は「人間はたいてい、相手に半分あげるなど気前よく分配するが、チンパンジーも全く同じだということが今回の研究で記録された」と述べている。

 しかし、メダルを選ばない側が提案された報酬を拒否できないようルールを変えたところ、チンパンジーも子どもも、自分がより多く報酬を得られる色のメダルを選んだという。

 研究チームでは、長い進化の過程で物を分かち合うことを学習していくうち、人間もチンパンジーもより公平な結果を選ぶようになったのではないかと推察。進化論の観点からみてチンパンジーが野生でも非常に協力的なのは、生存するために群れの中での報酬の分配に敏感になる必要があったからだろうと指摘している。(c)AFP