【1月9日 AFP】がんが再発したベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領(58)は今週行われる自らの大統領就任式に出席できない見通しだが、その一方で、チャベス氏関連グッズの売り上げは、きわめて好調だ。

 Tシャツ、野球帽、ジャケット、イヤリングなど、チャベス大統領の顔は至る所にプリントされている。

 ベネズエラの首都カラカス(Caracas)中心部、議会議事堂のそばにある小さな市場で、エリサ・フロレスデモレノさん(67)は、チャベス氏のグッズを買うために仲間たちに送り出されて、同国のはるか東部メリダ(Merida)からやってきたと語る。

 チャベス氏は現在、4回目のがん手術を受けているが、熱狂的なチャベスファンを自認するフロレスデモレノさんは、毎晩回復を願って祈りを捧げているのだという。

 フロレスデモレノさんは、同じチャベスファンの仲間たちのためにTシャツや帽子、ジャケットをかばん一杯に買い込みながら、取材に応じた。

 多弁なポピュリストにして、貧き者の英雄と呼ばれるチャベス氏は、反帝国主義を訴える演説と、イランやシリア、キューバなど米国の意向に沿わない国と行動を共にすることで、頻繁に米国をいらだたせている。

■ヒット商品は「チャベス氏の顔Tシャツ」と「司令官人形」

 関連商品の中にはチャベス氏の統一社会党(PSUV)の文字「PSUV」をプリントしたものもある。他には、ラテンアメリカの解放者として知られるシモン・ボリバル(Simon Bolivar)やキューバ革命の英雄チェ・ゲバラ(Ernesto Che Guevara)とチャベス氏の顔が並んでプリントされたものもある。

 だが、最近一番のヒット商品は長方形の枠の中にモノクロのチャベス氏の顔がプリントされたTシャツだ。

 小売店経営者のホルヘ・モレノ(Jorge Moreno)さんは「大統領の顔は、(チャベス)司令官人形とともに、今年度の大ヒット商品だった」と語る。

 これらの商品はすべて、大統領府がデザインを手掛けており、協同組合に配布された後に個人事業主が販売をしている。当然、著作権のトラブルはない。

「私たちは政府に対して(著作権などを)支払ってはいない。ここで重要なのは資本主義じゃないんだ」と、急進的チャベス支持者を自認するモレノさんは語った。

 モレノさんのショップはまさにチャベス商品の百貨店だ。ショップに並ぶキーホルダーからピン、ペン、マグカップ、タオル、ブレスレットまで、全商品がPSUVのシンボルカラーの赤色に染まり、チャベス氏の顔がプリントされている。価格はタダ同然だ。

「買い物客は全国からやってくる。自分たちの居住地ではこれらの商品が売ってないからね」とモレノさん。選挙のころが最も繁盛するという。

■さらにディープなチャベスグッズ店も

 カラカスの大きなホテルの中には、さらに熱狂的なチャベスファン向けのショップがある。軍服に身を包んだチャベス氏や、トレードマークの赤いシャツを着たチャベス氏の胸像、チャベス氏の写真がプリントされた時計などを販売するショップだ。

 50代の買い物客、シド・マレロさんは、コレクションしているチャベス氏のピンを買うためにショップに立ち寄った。

「日々のちょっとした儀式のようなもの」とマレロさん。チャベス氏の容体が良くないことから、チャベス氏を支持することが「本物の職業」のようになったという。

 一方、看護師のソニアさん(51)は、いらだちながらショップを後にした。チャベス人形が売り切れだったのだ。

「熱狂的なファンの母親のために買いたかったのに。母はキーホルダーも時計もイヤリングも全部持ってるわ。あとは人形だけだったの」とソニアさんは話した。(c)AFP/Alexandre Grosbois