【12月21日 AFP】英領チャネル諸島のジャージー島(Channel Island of Jersey)に駐留していたドイツ軍の兵士の手紙が、71年ぶりに家族の元に届けられた。約90通の手紙とカードは1941年のクリスマス直前、ジャージー島のセント・ヘリア(St Helier)地区にあったドイツの軍事郵便のポストを「解放」した島の若い男たちによって盗み出されていた。

 盗まれたうちの一通に書かれていたのは、「メリー・クリスマス、そして良い新年を。すぐにも戦争が終わり、また皆で一緒に楽しく暮らせることを何より願っている」とのメッセージ。手紙の主のドイツ兵たちは、ジャージー島での2度目のクリスマスを迎えており、中にはホームシックにかかっていることが分かる若い兵士の手紙もあった。

 5年前にある男性からこれらの手紙を預かったジャージー島公文書館の館長代理は、「ナチスの占領下にあった当時、島の人たちがどんな暮らしをしていたかを示すものは数多く残されていますが、これらの手紙は、占領する側にあった人たちの気持ちを知るうえで他に類のない、興味深い見識を与えてくれるものです」と話している。手紙を預けた男性は、今も身元を明らかにしていない。

 地元の郵便会社がドイツの郵便会社に連絡を取ったところ、同社は受取人の親戚などが今も同じ住所に住んでいる10軒を特定。ようやくその一部を配達し終えたという。

 そのうちの1人、フランクフルト(Frankfurt)に住む農家のエンゲルベルト・ベルクマン(Engelbert Bergmann)さん(55)は、1980年代半ばに他界した祖父の隣人だったエーミール・アダム(Emil Adam)さんからの手紙を受け取った。

 英国放送協会(BBC)の取材に対し、ベルクマンさんは、「最初は冗談ではないかと思いましたが、話を聞いて非常に関心を持ち、手紙に何が書いてあるのか、ぜひとも知りたくなりました。他の手紙も、親戚や子どもさんがまだ存命なら、配達することがとても大切だと思います」と話した。ベルクマンさんによると、アダムさんも1980年代半ばに亡くなったという。

 1940~45年にナチスに占領されていたチャネル諸島は、自治権を持つ英国王室属領(Crown dependency)の1つで、独自の法体制と財政制度、司法制度を有している。(c) AFP