【12月20日 AFP】生物学者らは、人間の手は進化の奇跡だと言う。レンガ積みや筆記、アイスホッケー、脳外科手術など、多様な動きを可能にする巧妙さを人間にもたらしたのは「手」だ。だが、何千年もの時間をかけて、人間の手を現在の形に作り上げてきたのは何だったのだろうか?

 多くの専門家が推測するように、原始的な道具をつかみ、使うためだったのだろうか?あるいは、果実を取るためだったのだろうか?これについて、新たな説が浮上している。他の人間と戦うことができる「拳」を作るためだったというのだ。

■人間の手は「固い拳」を作れる形に進化

 米ユタ大学(University of Utah)のデービッド・キャリアー(David Carrier)教授と共同で研究結果を発表した同僚のマイケル・モーガン(Michael Morgan)氏は、19日付けの米科学誌「Journal of Experimental Biology(実験生物学ジャーナル)」で、「私たちの進化に『攻撃』が果たした役割はまだ十分に理解されていない」と指摘。手先が器用になったことが進化をさらに推進したとの説には同意するものの、攻撃も影響を及ぼしたに違いないと説いた。

 人間に最も近い種であるチンパンジーは手の平と指が長く、親指が短い一方で、人間の手の平と指はチンパンジーよりずっと短く、親指が長く、強い。つまり、チンパンジーが指を丸めてもドーナツ型しか作れないのに対し、人間は指を握りしめて拳を作ることができ、折り曲げた4本の指の上に、親指を重ねることができるのだ。そうすることで、戦う時に使う拳はより固くなり、同時に手の平と指をけがから守ることができる。

 両氏は、「類人猿は他の哺乳類と比べて戦いや暴力が多く、攻撃的でした。それは私たちも同じです。私たちは、暴力の申し子なのです」という。

■親指を4本の指に重ねた拳は強い

 さらに、この説は生体力学のモデルと実験にも裏付けられている。両氏は武術家にサンドバッグを強打してもらい、平手打ちやパンチの強さを計測した。すると驚くことに、平手打ちもパンチも、一撃あたりの強さは大差がなかった。

 ただし、折り曲げた4本の指の上に親指を重ねて拳を作ると、親指をに横に突き出した拳の時よりも、打ったときの力が2倍に高まることが分かった。親指と人さし指の骨を通して、突く力が標的に直接伝わるからだ。さらに、「控え壁」になる親指があることで、指関節の硬さは4倍になり、繊細な手骨と靱帯(じんたい)をけがから守ることができる。

 教授らは、拳の作り方を学んだ初期の人類は、さまざまな資源の取り合いにおいて、明らかな利点を得ていただろうとみている。「握り拳でたたくことができた人間は、自分がけがを負うことなく、相手をより強く打つことができたはず。そのため彼らは、交尾のために戦うことができ、繁殖が進んだと推測できる」という。(c) AFP