【12月10日 AFP】南米コロンビア第2の都市、アンティオキア(Antioquia)州メデジン(Medellin)を訪れたなら、足元のマンホールをのぞいてみよう。ミゲル・レストレポ(Miguel Restrepo)さん(62)とマリア・ガルシア(Maria Garcia)さん夫妻が愛犬ブラッキーとともに暮らす小さな「マンホールの家」が見つかるかもしれない。

 メデジンの工業地区にある「マンホールの家」の広さはわずか縦3メートル、横2メートル。天井が低すぎるため立つことはできない。それでもキッチンやテレビが備わり、床はタイル敷きだ。クローゼットにラジオ、扇風機もある。

 レストレポ夫妻はこの小さな地下の「家」に20年も住み続けている。何があってもこの家を出るつもりはないという。地上の家に住めば、公共料金や税金などさまざまな出費に迫られるからだ。「どんな家とも取り替える気はないね」とレストレポさん。

 以前はリサイクルゴミの収集で生計を立てていたレストレポさんだが、肺を患い仕事を続けられなくなった。現在は近隣住民たちからの支援や、車両の見張り役を引き受けて稼いだ金などで生活している。

■大統領より快適?マンホール暮らし

 マンホールの「家」は豪華でもなければ快適ともいえない。レストレポさん夫婦はセメントで壁を築いて「家」を下水道から遮断した。「家」の中はときにとても暑くなるので、扇風機が活躍する。シャワーはなく、体を洗う時はバケツにためた水を使う。

 大変なのは雨の日だ。雨が降り始めたら即座にマンホールの開口部をビニールシートで覆う。さもなければ雨水が流れ込み、家の中が水浸しになってしまうからだ。

 レストレポさん夫婦はマンホールの外にも、小さな庭を持ち草花を育てている。クリスマスシーズンの今はデコレーションを施したモミの木が通りかかった人々の目を楽しませており、それがレストレポさんの喜びでもある。

 若い頃に近くの町から仕事を探しにメデジンに出てきたレストレポさん。ホームレスとなった今でも、自身の境遇に不満はないという。

「ここでの暮らしは、大統領より快適なんだ。大統領は問題だらけだが、私には1つもないからね」。ホームレスのための宿泊施設に移るようにとの社会福祉担当員からの勧めも断り続けている。(c)AFP/Raul Arboleda