【12月7日 AFP】英国で最も受賞したくない文学賞と言われる「小説における最悪な性描写賞(Bad Sex in Fiction Award)」の今年の受賞者に、カナダ人作家ナンシー・ヒューストン(Nancy Huston)氏(59)が決まった。同賞を主催する英文芸評論誌リテラリー・レビュー(Literary Review)が4日、発表した。

 ヒューストン氏は、小説「infrared(仮訳:赤外線)」でこの「ありがたくない名誉」を獲得した。女性の受賞者は3人目。

 ロンドン(London)の高級会員制クラブ「イン・アンド・アウト(In And Out)」で行われた授賞式にヒューストン氏は出席しなかったが、次のようなコメントを寄せた。「今回の私の受賞をきっかけに、多くの英国女性たちがパートナーの体を至近距離で撮影してくれればと願っています。整然としていようと乱れていようと、どんな状況であっても」

 ヒューストン氏の他、受賞候補には処女作「Rare Earth(レアアース)」の中で好色な主人公を「孤独なサーカス軽業師」に例えたポール・メイソン(Paul Mason)氏、「The Yips」で主人公の恋人の男性を「腹をすかせた果樹園の鳥」と表現した二コラ・バーカー(Nicola Barker)氏など8人が上がっていた。

■候補から外れた、あの話題小説

 一方、世界的ベストセラーとなったSM官能小説「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(Fifty Shades of Grey)」の作者E・L・ジェームズ(E.L.James)氏は、ソーシャルネットワーク(SNS)でも推薦の声が多かったが、候補対象には入らなかった。主催者側は「明白な官能小説」は賞の対象としていないためと説明している。

 人気児童小説「ハリー・ポッター(Harry Potter)」シリーズの作者、J・K・ローリング(JK Rowling)氏が初めて大人向けに書いた小説「カジュアル・ベイカンシー 突然の空席(The Casual Vacancy)」についても、審査員らは長い時間をかけて検討したという。しかし、他の候補作品と比べた場合「この作品の罪は欲得的な点にある」と判断し、候補から外した。

「小説における最悪な性描写賞」は1993年、英作家イブリン・ウォー(Evelyn Waugh、1903~66年)の息子でリテラリー・レビューの編集者だったオーベロン・ウォー(Auberon Waugh)氏が創設した。同氏は、販売部数を増やしたい出版社が作家たちに性描写を作品に含めるよう働きかけていると懸念していたという。

 同賞の目的についてリテラリー・レビューは「粗削りな悪文や、おざなりで冗長になりがちな現代小説の中の性描写に関心を持ってもらい、こうした小説を読むことを思いとどまらせることにある」「純文学小説における最低な表現を、今後も誇りを持って穏やかに叱責していく」と述べている。(c)AFP