【12月5日 AFP】英国のウィリアム王子(Prince William)との第1子を懐妊したキャサリン妃(Catherine, Duchess of Cambridge)は現在、重いつわりのためにロンドン(London)市内の病院に入院している。

 だが、妊娠悪阻(にんしんおそ)を経験したことのある女性であれば、キャサリン妃が苦しんでいる嘔吐(おうと)を単に「つわり」と表現することは的外れだと感じるだろう。 「1日に30回から40回も嘔吐して入院が必要な状態ならば、これはつわりとは全く別の妊娠合併症だ」と、3人の子どもの妊娠時に妊娠悪阻を患ったレイチェル・トレガスト(Rachel Treagust)さん(28)は語る。

 英名「hyperemesis gravidarum」の頭文字をとってHGとも呼ばれる妊娠悪阻の症状は、トレガストさんによれば「真っ暗な中で文字通りベッドに寝たきり。テレビもだめ。ちょっとしたにおいや食べ物があるだけで吐き気がするし、自分のだ液を飲み込むこともできない。それほどつらいものだ」という。

 英国王立産婦人科医協会(Royal College of Obstetricians and Gynaecologists)によれば、つわりは妊娠初期の女性の約30%にみられる。一方、英国民保健サービス(National Health ServiceNHS)によれば、妊娠悪阻を患う妊婦はおよそ200人に1人の割合で、重度の場合は脱水症状の治療や点滴のため数日間の入院が必要となる。

 つわりは妊娠12週におけるホルモン変化が原因とされ、昼夜に関わりなく吐き気に見舞われる。これに対し、絶え間なく襲う嘔吐と、これに伴う脱水症状や体力低下、めまいなどを発症するのが妊娠悪阻だと、英国王立産婦人科医協会のダグニ・ラジャシンガム(Daghni Rajasingam)氏は説明する。通常は妊娠12週までに症状は治まり、初期に適切な治療を行えば出産には何の問題もないという。

 英国王立産婦人科医協会は会報のなかで、重度のつわりは気分の落ち込みやパートナーとの関係のこじれ、出産への不安などを生じ、妊婦の「生活の質」に著しい影響を与えると指摘する一方、抗ヒスタミン剤や少量のビタミンB6の処方など安全で効果的な治療法を紹介している。(c)AFP/Alice Ritchie