【12月3日 AFP】仏ワインの名産地ボルドー(Bordeaux)の格付けシャトー(ワイン醸造所)が、中国人実業家に買収された。関係筋が11月29日に明らかにしたところによると、買収されたのはサンテミリオン(Saint Emilion)地区の「シャトー・ベルフォン・ベルシエ(Chateau Bellefont-Belcier)」。同地区では最高水準の「グランクリュ・クラッセ」に格付けされている。

 ボルドーには最近、不動産業から観光業まで中国資本の参入の波が押し寄せており、格付けシャトー買収は大きな転機といえる。

 シャトー・ベルフォン・ベルシエの新たな所有者は、鉄鋼業で財を成した中国人実業家(45)で、既に中国でワイン輸入業を手掛けている。30日にシャトーの従業員たちと会見した後、中国へ帰国した。

 ベルフォン・ベルシエは総面積20ヘクタール。13ヘクタールのブドウ畑を所有している。関係筋によると最終的にブドウ畑1ヘクタール当たり150~200万ユーロ(約1億6000万~2億1500万円)で売却されたという。

■ボルドーでも存在感強める中国資本、反発はなしか

 ボルドーでは過去2年以内にベルフォン・ベルシエより格付けの低いシャトー約30軒が中国人投資家に買収されている。今年は、取扱量で中国がボルドー最大の輸出市場として躍り出た。

 中国人による仏シャトー買収では今年、ブルゴーニュ(Burgundy)地方の「シャトー・ドゥ・ジュブレ・シャンベルタン(Chateau de Gevrey-Chambertin)」の中国人実業家への売却をめぐり、地元ワイン生産者や極右政党から「国の遺産を売り渡す行為だ」といった批判が噴出し、大きな論争が巻き起った。だが、外国人によるシャトー所有の伝統があるボルドーでは、これまでのところ中国資本の参入は問題になっていない。

 ボルドーワイン委員会(CIVB)のジョルジュ・オサルテ(Georges Haushalter)会長も、反発が起きるとは予想していない。「日本(系資本)が所有するシャトー・ベイシュヴェル(Chateau Beychevelle)やシャトー・ラグランジュ(Chateau Lagrange)があるが、誰も反発していない。いずれも非常に良い仕事をしている」と述べている。

 一方、農村部の土地開発を監督する政府機関「サフェール(SAFER、土地整備農村建設会社)」の地区担当責任者、エルベ・オリビエ(Herve Olivier)氏は「今回は(ボルドーにとって)初めてのこと。人々の反応を見たい」と述べた。

 同氏によれば、年内にさらに10軒のシャトーが中国資本に買収される可能性があるという。ただ、ボルドーに投資する中国人実業家らはブルゴーニュのジュブレ・シャンベルタンの買収劇のように高額取引を持ち掛けてはこないとオリビエ氏は指摘し、次のように語っている。

「ボルドーのブドウ畑はいつでも外国人投資家にオープンであってきたし、そのときどきの流行がある。英国系、ベルギー系、米国系、日系、それに保険会社や銀行がシャトーを買収したこともあった。今はそれが中国系だ。他とは違うところがあるとすれば、非常に短期間、たった2年間に30軒ものシャトーを買収したという点で、これはすごいことだ」 (c)AFP/Suzanne Mustacich