【11月27日 AFP】温暖化する気候に引きつけられカナダ西部の森に移動した米粒大のキクイムシの群れにより、さらなる森林破壊と気温上昇が進んでいるとする研究論文が、25日の英科学誌ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)で発表された。

 カナダ西部ブリティッシュ・コロンビア(British Columbia)州の森林面積の5分の1に当たる約17万平方キロの森林に侵入しているのは、食欲旺盛な「アメリカマツノキクイムシ」だ。

 キクイムシたちはマツの木の樹皮の下に卵を産みつけ、それと同時に幼虫を守る菌を注入する。幼虫に内側から食われることと菌の相乗効果で木が倒れ、同時に木が行っていた蒸散(植物による水蒸気の放出)作用も失われる。蒸散作用とは、人間の汗と同じように冷却効果を持つ。

 論文の共著者、トロント大学(University of Toronto)のホリー・マネス氏(Holly Maness)によると、キクイムシが関与している夏季の気温上昇は約1度だったという。

 マネス氏は「われわれが観測した地表温度の上昇は比較的大きく、おそらく循環や雲量、降水量など地域気候をさらに変動させるには十分だろう」と懸念を示す。また「気候変動の影響は連鎖的だ。これまでの研究で気候変動によってキクイムシが繁殖することが示されている」と警告した。

 研究チームによると、このキクイムシの大繁殖はカナダ史上最大の生態学的かく乱と位置づけられている。米国西部でもまた、広大な森林地帯で同様の大発生が起きているという。

「現在のキクイムシの繁殖は、安定した気候によって抑えられていた多くのプロセスの微妙なバランスが、気候変動によっていかに簡単に破壊されうるかを示す教訓だ」とマネス氏は述べている。(c)AFP