【11月22日 AFP】日本では65%を超える家庭で使用されている「ウォシュレット」や「シャワートイレ」などの温水洗浄便座。海外からの来訪者たちは洗浄シャワーや温かい便座、消臭機能を備えたハイテクトイレに感嘆する。

 住宅設備機器大手TOTOは、これまでに3000万台以上の「ウォシュレット」を売り上げてきた。それでも世界のトイレ市場独占は簡単ではない。特に米国の消費者はトイレ文化に関して奥手で、その心はいまだつかみがたい。

■欧米でトイレの話題はタブー

 TOTOの海外事業担当、田端弘道(Hiromichi Tabata)取締役も「外国では文化的なタブーがあってなかなか難しい」と認める。「アメリカ人はそういうことを一切話さないんですよ。だからいくら彼らがいい商品だと評価していても、なかなか口コミで伝わらない」。田端氏によれば、米国の有名人たちの多くが来日した時にウォシュレットを称賛するが、それも一時的なものだという。

 米ポップ界のディーバ、マドンナ(Madonna)は2005年に来日した際に日本文化を絶賛。温水洗浄便座に関しても「あの温かい便座が、ずっと恋しかったの」と言わしめた。どんな企業も夢に見る強力な「無料宣伝」だ。

 日本を訪れる外国人たちも、ウォシュレットの多様な機能や日本語表示のみの使用説明に最初こそ戸惑うが、「ソニー」や「トヨタ」など国際的に認知されている「日本ブランド」に比べると、ウォシュレットの存在感が海外では薄いことに驚きを示す。

 日本は高い技術と衛生面が非常に重要視される国だ。例えば飲食店に入れば、手を拭くための温かいおしぼりが出てくる。そうした環境から、日本では温水洗浄便座が公共の場やオフィスのトイレだけでなく7割以上の家庭でも使用されている。

 しかし初代ウォシュレットが登場した1980年代には、日本でもウォシュレットはすぐには成功しなかった。「おしりだって洗ってほしい」のキャッチコピーで82年に放映されたCMには苦情さえ聞かれることがあった。しかし挑発的なマーケティングが功を奏し、この独創的なトイレは次第に消費者の間に浸透していった。

■海外進出の鍵は「ローカライゼーション」

 近年のTOTOの業績は堅調で、2011年4月~2012年3月の年次決算では全世界での売上高が4527億円、純利益は前年比4.4%増の92億7000万円だった。しかし、それでも純利益のうち国外での売上が占めるのは約14%にとどまっている。

 TOTOにとって海外の消費者をつかむことが挑戦課題となっている一方、海外のホテル市場では、ある程度の成功をウォシュレットは収めているという。また田端氏によれば、日本と類似した文化を持つ中国や東南アジア諸国でもウォシュレット需要は伸びている。

 ウォシュレットの機能を進出地域に合わせるローカライゼーションも鍵となる。例えばインドネシアのような熱帯気候の市場では、温かい便座は必要なく、ノズルから噴射される水の温度もぬるめになっている。

 ウォシュレットの価格は比較的高く設定されているが、進歩的な欧州の人々の間では大きな成功が見込めるとTOTOではみている。すでにスイスでは競合他社が類似製品を販売しており、欧州の人たちも温かい便座と温水という考えに慣れるはずだと、田端氏は期待する。(c)AFP/Kyoko Hasegawa