【11月19日 AFP】南米の森林に生息する小さな昆虫が、補聴器の進歩および医療向け画像診断の品質向上に役立つかもしれない──16日の米科学誌サイエンス(Science)で発表された研究結果によると、キリギリスと人間の聴覚機能には大きな類似点があることが明らかになった。

 キリギリスの両前脚に鼓膜のような器官があることは以前から知られていた。しかしこれまで、両脚の鼓膜と振動を捉える受容器とがどのようにつながり音を認識しているかについては解明されていなかった。人間とキリギリスの耳は、そもそも構造および進化の過程が大きく異なっている。ただ今回の調査結果によると、キリギリスに「中耳」のような働きをする小さなな器官が発見されたという。

 この研究を主導したブリストル大学(University of Bristol)のダニエル・ロバート(Daniel Robert)教授らは、キリギリスの「中耳」が「機械式てこ」のように機能していると述べ、鼓膜自体が小さなシーソーのようなものを構成し、それが内耳とつながっていると説明した。哺乳類の耳では、鼓膜が集めた音を中耳で空気伝播音から液体振動に転換し、蝸牛で周波数を分析するため、3つの器官を必要とする。

 ロバート教授らは、この高度に発達したキリギリスの耳の機能の進化過程を解明することで、同様の装置を作ることも可能になると語る。また英ストラスクライド大学(University of Strathclyde)の超音波工学センター(Centre for Ultrasonic Engineering)のジェームズ・ウィンドミル(James Windmill)教授も、補聴器をはじめ、医療向け画像診断、橋などの建造物を評価するために用いられる超音波非破壊検査など、様々な技術にこのキリギリスの耳の働きが応用できるのではと期待を寄せた。(c)AFP