【11月20日 AFP】30年余にわたって戦火にあえいできたアフガニスタン――その乾燥した平原や山岳地帯の地下には、ともに長い歳月をかけて蓄えられた鉱物資源と歴史的遺産という2つの富が眠っている。今、繁栄と平和に満ちた未来を築こうとする同国は、資源開発を進めて経済的発展を目指すか、考古学的遺産を保存すべきかの選択の間で板挟みになっている。

 首都カブール(Kabul)から約50キロメートル離れた、4世紀の仏教都市メス・アイナク(Mes Aynak)遺跡。この地で、アフガニスタン政府は開発という道を選んだ。2007年、1150万トンの銅鉱石の採掘権を30年契約で手にしたのは、中国冶金科工集団公司(Metallurgical Group CorporationMCC)だ。

■消えゆく「ポンペイより重要」な仏教遺跡

 実はメス・アイナク自体も銅鉱石を掘り出すためにできた共同体なのだが、古代の集落や寺院、仏像たちが新たな鉱山開発によって破壊されてしまう危機に、アフガニスタンを援助する国際社会が声を上げた。圧力を受けてアフガニスタン当局も動き、MCCにまず同地の遺跡発掘に出資することを要請した。

 メス・アイナク発掘プロジェクトを監督する「アフガニスタンにおけるフランス考古学調査団(DAFA)」のフィリップ・マルキ(Philippe Marquis)団長によれば、2013年半ばまでのMCCの出資額は計3000万ドル(約24億円)に上る。

 約4平方キロの遺跡では、50人ほどの考古学者と550人の作業員たちが発掘作業を進めている。これまでにたくさんの住居や寺院、小屋などが驚くほど素晴らしい保存状態で見つかった。発掘に参加しているイタリア人考古学者ロベルタ・マルツィアーニ(Roberta Marziani)氏は、母国の世界遺産を引き合いに出して言う。「ポンペイ(Pompeii)より重要な遺跡だ。規模ももっと大きい」

 マルキ団長によると、仏像も1000体以上発掘されているが、これは考古学的遺産の豊かなアフガニスタンでは珍しくない。ただ、「問題は仏像の発見ではなく、発掘した仏像の保存だ。アフガニスタンにはその仕組みが存在しない」。

 発掘作業は2013年末までに終了する。その後、この4世紀の町並みはコンピューター上にデータとしてのみ残され、実物は資源開発と引き換えに破壊されていく運命が待っている。現場で考古学者らを纏めるジャウィード・モフセンザダ(Jawed Mohsenzada)氏は悔しがる。「この遺跡が消失してしまうんだと思うたび、怒りがわく」

■国民のため選んだ経済発展

 しかし「メス・アイナク鉱山」は、アフガニスタン鉱工業省によれば年間3億2000万~3億5000万ドル(約260億~285億円)の収入が見込める事業だ。何千人という雇用を創出し、間接的に恩恵を受ける人は数万人にも及ぶだろうという。

 モサデク・ハリリ(Mossadeq Khalili)副文化相はこう述べている。「われわれは、過去を守りつつアフガニスタン国民に経済的な未来をもたらす銅山を開発するため、最善を尽くしている。政府には国を発展させる義務がある。他に選択肢はないのだ」 (c)AFP/Joris Fioriti