【11月12日 AFP】中国最長の川、長江(揚子江、Yangtze River)で絶滅が危惧されているスナメリの生息数調査が11日、開始された。調査期間は1か月以上が予定されている。  

 中国では「川のブタ」を意味する「江豚」とも呼ばれるスナメリだが、2006年に行われた長江での追跡調査で確認された生息数はわずか1800頭だった。調査を率いる中国科学院水生生物研究所(Institute of Hydrobiology、Chinese Academy of Sciences)の王丁(Wang Ding)研究教授は、「残っているのは約1000頭程度だろう」とその数が減少していると予想。「揚子江の現在の状態を表すものとしても、人びとはスナメリを長江の象徴だとみなし始めている」と語った。  

 調査を支援する世界自然保護基金(WWF)は、スナメリに打撃を与えてきたのは生息域への人間の侵入および環境の悪化と指摘する。ボートとの衝突や漁具による事故でスナメリが死ぬ事態が起こるようになった一方で、公害や気候変動による深刻な干ばつによって生息域の環境が悪化し食料源にも影響が及んでいる。  

 WWFの中国淡水プログラム担当責任者、Lei Gang氏は「揚子江のスナメリを守るつもりならば、揚子江とその湖を健康な状態を維持する行動を今すぐ起こさなければならない。法とその適用を改善し、有害な漁法を規制する。また浚渫(しゅんせつ)工事をめぐっては管理体制を強化し、新たな貯水池を開発する必要がある」と述べる。  

 何も行動を起こさなければ、長江のスナメリは15年以内に絶滅するとWWFではみている。

 中国の河川は近年、工場や農場からの有毒廃棄物でひどく汚染が進んでいる。急速な経済成長が30年以上続いた一方で、環境保護法の整備や施行が置き去りにされた結果だと一部環境団体からは非難されている。  今回の調査では、調査船2隻が中国中部の武漢(Wuhan)を11日に出発。最初は上流へと向かい、長江にある世界最大級のダム、三峡ダム(Three Gorges Dam)近くの湖北省宜昌(Yichang)まで行って折り返し、河口の上海(Shanghai)へと下る。(c)AFP/Bill Savadove