【10月30日 AFP】現代演劇ではしばしば観客と俳優がやりとりする場面があるが、入場料を払って血まみれの殺人鬼に追い掛け回されるのは、いかがなものだろうか?

 今年のハロウィーン・シーズン、米ニューヨーク(New York)に「キラーズ:悪夢のお化け屋敷(Killers: A Nightmare Haunted House)」がオープンする。来場者は部屋から部屋へと渡り歩き、流血の現場を目にすることになる。

 マンハッタン(Manhattan)のローワー・イースト・サイド(Lower East Side)地区の劇場に設営された「キラーズ」は、一般的なお化け屋敷とは異なり、米国犯罪史上、最もぞっとする犯罪を描写した裏道を歩くようなものだ。

 アトラクションの暗がりに潜むのは、俳優たちが演じる米国の大量殺人犯たち。「ミルウォーキーの食人鬼」と呼ばれたジェフリー・ダーマー(Jeffrey Dahmer)、墓を掘り起こして自分用に「女性(の遺体を使った)スーツ」を作り、映画『サイコ(Psycho)』や『悪魔のいけにえ(The Texas Chainsaw Massacre)』に着想を与えたエド・ゲイン(Ed Gein)、そして「殺人ピエロ」の異名を持つジョン・ウェイン・ゲイシー(John Wayne Gacy)もいる。

■恐怖の惨劇の連続、聞こえるのは絶叫

 ハロウィーンに熱狂する季節の米国では、昔からお化け屋敷は不可欠だった。だが、「キラーズ」のような高予算企画は年々、その恐怖の度合いを過激化させている。

 恐怖を求めてやまない大勢の人びとの楽しみは、まずロビーから始まる。20~60ドル(約1600~4800円)を支払って入場したロビーには、実在した連続殺人犯たちの遺物などが展示されている。チャールズ・マンソン(Charles Manson)らによる絵画や詩の他、ダーマーが刑務所内で殺害された際の検視写真などもある。

  米連邦捜査局(FBI)の捜査官姿の案内係が人びとに列を作るよう指示し、小人数のグループに分かれてお化け屋敷の黒カーテンの中に誘導される。中で俳優たちに触れられることを希望する人たちは、目印として額に血のりを付けてもらっておく。

 いったん中に入れば、耳に入る最も大きな音は、悲鳴だ。その悲鳴は、猟奇的な医師に自分の脚が切断されるのを目の当たりにする被害者女性の声だったり、あるいはごく単純に、来場者の1人の悲鳴だったりする。

 チェーンソー、血がこびりついた廊下、電気椅子で死刑を執行されるテッド・バンディ(Ted Bundy)、少女たちの血で満たした風呂に漬かる準備をする16世紀ハンガリーの伯爵婦人──初めはあまり怖がっていなかった人でも、繰り返される惨劇のシーンに少しずつ不気味さを感じるようになるだろう。

■シリアルキラーは米国の有名人

 ショーを監督したジョン・ハーラチャー(John Harlacher)氏は、シリアルキラー(連続殺人犯)が米国では特有の「共鳴」を起こすと指摘する。

 ハーラチャー氏は「彼ら(連続殺人犯)は世界中に存在するが、米国では文化が彼らを有名人に持ち上げる」と述べ、米国の殺人鬼たちは倒錯した形で、米国の伝統的価値観である「planning ahead, working hard(前もって計画を立て、一生懸命行動する)」を体現しているとも言えると付け加えた。

 だが、「キラーズ」のショーは、現実世界の悪を美化し、それを使って金儲けをしているという批判を受けている。

 ドロシー・ストローター(Dorothy Straughter)さんは、1978~91年の間に、ダーマーに19歳の息子をレイプされ、切り刻まれ、食べられた。ストローターさんは「どうしてそのようなもの(ショー)を誰かが開催するのか、分からない」とデイリー・ニュース(Daily News)紙に語った。

 これに対し、ハーラチャー氏は美化はしていないと反論する。「私たちはうわべを取り去りたかった。来場者たちは死ぬほど恐怖して出口から出てくるはずだ。殺人者たちにぞっとして出てくるだろう」と、ハーラチャー氏は述べた。

 ショーは、3万5000人の来場を見込んでいる。(c)AFP/Sebastian Smith