【10月31日 AFP】インドネシア・カリマンタン島(ボルネオ島、Borneo)で、空気銃で100発以上も撃たれた野生のオランウータンが、致命的な重症を負いながらも奇跡的な回復を見せている。同国の自然資源保全当局が25日、明らかにした。

 このメスのオランウータンは今月10日、中部カリマンタン(Central Kalimantan province)州にある油ヤシのプランテーション農園付近で、瀕死(ひんし)の状態で当局のレンジャーに発見された。

「アアン(Aan)」と名付けられたこのオランウータンは、頭に37発、その他全身に67発の弾を受けていた。助からないのではと思われたが、AFPの取材に応じた当局者によると弾の摘出手術後、島内のリハビリテーションセンターで治療を受けているが、エサも食べ始めるなど回復への希望が持てるという。

 ただ、アアンは片方の目を失明。もう一方も視力を失う恐れがあり、また聴力にも後遺症が残る可能性があるという。

 この当局者は「野生に戻せたとしても、失明したうえ聴力も低下したとなれば、長く生きられるかどうかは分からない」と話した。

■相次ぐオランウータン「駆除」、拡大するヤシ農園が背景に

 誰がアアンを撃ったのかは不明だが、カリマンタン島ではプランテーション農園に入り込んだ野生のオランウータンが、害獣として駆除されるケースがこの1年間に数回、発生している。

 今年4月には東カリマンタン(East Kalimantan)州で、オランウータン3頭とテングザル数匹を銃で銃殺・撲殺したとして、男4人が禁錮8月の有罪判決を受けた。この男たちは、島の南部を領有するマレーシアの企業が所有する油ヤシ農園に雇われオランウータン駆除を請け負っていた。

 専門家によると現在、野生のオランウータンは2種・約5~6万頭が生息しており、うち8割がインドネシア、残る2割がマレーシアに分布しているとみられる。しかし密猟や、油ヤシのプランテーション開発などのため急速に進む森林破壊によって生息数を減らしており、絶滅が懸念されている。(c)AFP