【10月25日 AFP】サウジアラビアにあるイスラム教の聖地メッカ(Mecca)を目指し、昨年12月に徒歩で巡礼の旅に出たボスニア・ヘルツェゴビナの巡礼者が22日、314日間に及ぶ旅の様子をメッカで語った。内戦中のシリアを含め、7か国を通過したという。

「20日にメッカに着きました。疲れは感じません。人生最良の日々ですよ」――サウジアラビアで電話インタビューに応じたセナド・ハジッチ(Senad Hadzic)さん(47)は、そう話した。

 重さ20キロのバックパックを担いで約5700キロを歩き、ボス二ア・ヘルツェゴビナからセルビア、ブルガリア、トルコ、シリア、ヨルダンを通り、サウジアラビア南西部にあるメッカに到着した。

 巡礼の途中には、ブルガリアで気温マイナス35度、ヨルダンで44度を経験。イスタンブール(Istanbul)ではボスポラス橋(Bosphorus Bridge)を徒歩で渡る許可を得るのに数週間、ヨルダンとサウジアラビアの国境では入国ビザの取得に2か月待たされたという。

 シリアを旅したのは4月。11日間で約500キロを歩き、アレッポ(Aleppo)とダマスカス(Damascus)を通り抜けた。親政府派と反政府派がそれぞれ設けた検問所を何十か所も通過したが、一度も拘束されることはなかった。

「バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領の支持派が作った検問所のひとつを通ったときには、兵士にバックパックの中身を全部見せろと命じられた。持っていたイスラム教の聖典コーランを見せ、徒歩で巡礼の旅をしていると説明すると、通してくれた」

 ハジッチさんは、自身の旅の計画などを交流サイト(SNS)のフェイスブック(Facebook)で報告。シリア内務省が外国人向けに発行している出入国許可証とみられる写真も掲載していた。

 フェイスブックには、「夢の中で神が道を示してくれた。イラクではなく、シリアを通ることも神の指示だった」。「私はアラーの名の下、イスラム教のために、ボスニア・ヘルツゴビナのために、そして両親ときょうだいのために歩いた」とつづられている。

 大巡礼「ハッジ(Hajj)」はイスラム教の五行の一つ。巡礼が可能なイスラム教徒はすべて、一生のうちに一度は行わなければならないとされている。(c)AFP