【10月25日 AFP】リビアの最高指導者だった故ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の四男、故ムタシム(Mutassim Kadhafi)氏の関与が疑われる、南仏のリゾート海岸コート・ダジュールの高級売春組織をめぐる審理が22日、マルセイユ(Marseille)の裁判所で始まった。

 男7人、女1人の計8人の被告の裁判で、中心となった複数のレバノン人実業家らは今も行方をくらましている。この組織はコート・ダジュール沿いのカンヌ(Cannes)で開かれるカンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)の期間中に活発に活動していたとされる。

 人身売買取り締まり当局が2007年に始めた捜査で、実業家の1人とムタシム・カダフィ氏との接点が見つかった。だが、ムタシム氏への事情聴取は行われないまま、ムタシム氏はリビア内戦中の昨年10月20日、カダフィ大佐とともに殺害された。

 ムタシム氏との関係が取り沙汰されているのは、南アフリカやフランス、東欧でスカウトした若い女性たちを雇っていたという自称モデル・エージェンシー経営者のレバノン人、エリー・ナハス(Elie Nahas)被告。

 高級売春婦だった疑いがもたれているナハス被告の弁護士は「なぜナハス氏との関係が分かっていたのに、カダフィ氏の聴取を行わなかったのかは当然、疑問だろう」と語った。

 今回の裁判で原告となっている反売春団体のパトリック・リッツォ(Patrick Rizzo)弁護士は、07年から08年の「政治状況」によって捜査が妨げられたと説明した。「当時エリゼ宮(仏大統領府)は、カダフィ大佐を受け入れていた。大佐はフランスの良き友人だったのだ。こうした状況のせいで、国際捜査は進まなかった」という。

 これまでの取り調べから、何千ドルもの大金を払う用意がある中東やサウジアラビア、クウェートの顧客のために、カンヌ映画祭の期間を中心にさまざまな国籍のモデルやミス・コンテストの優勝者、高級売春婦といった女性たちがスカウトされていたことが明らかになっている。(c)AFP