【10月23日 AFP】2009年4月6日にイタリア中部で発生し309人が犠牲になった地震の危険性を過小評価したとして科学者6人と元政府職員1人が過失致死罪に問われていた裁判で、イタリア中部ラクイラ(L'Aquila)の裁判所は22日、7被告に禁錮6年の判決を言い渡した。

 裁判所は7被告に地震被災者に対する900万ユーロ(約9億4000万円)以上の損害賠償の支払いも命じた。

 当時ラクイラでは数週間にわたって小規模な地震が続いていたため、国の委員会が2009年3月31日にラクイラで会合を開き、イタリアトップレベルの地震学者らが状況を分析した。会合が開かれたことで住民の間に不安が広がった上、住民の1人が地震を予言したために住民の不安は一層高まったが、会合後に民間防衛庁の副長官が記者会見で「地震活動はラクイラに危険を与えない」と発表していた。

 しかし、会合の6日後に地震が発生し、ラクイラとその周辺の村落は中世の教会が倒壊するなどの被害を受け、約12万人が被災した。

■求刑を上回る厳しい判決に科学界から批判

 検察側は専門家が「不完全で、的外れの、不適切で犯罪的に誤っていた」分析を提供したため、住民の多くは最初の揺れが起きたときに屋内にとどまったと主張し、住民に地震が起きる危険性を警告することを怠ったとして、各被告に禁錮4年を求刑していた。

 弁護側は控訴する意向を示している。イタリアの司法制度では、上訴する2度の機会が尽きるまでは7被告が収監されることはない。

 この裁判をめぐっては、専門家が裁判を恐れて自らが得た知見を公表しなくなる恐れがあると指摘されている。5000人を超える科学者がジョルジョ・ナポリターノ(Giorgio Napolitano)大統領にこの裁判は不当だとする公開書簡を送っていた。(c)AFP/Ella Ide