【10月19日 AFP】第2次世界大戦中、英国の統治下にあったビルマ(現ミャンマー)で、英空軍の単座戦闘機スピットファイア(Spitfire)がひそかに地中に埋められ、日本軍の目から隠された。組み立てられないまま木箱に入れられ、英軍の手でミャンマー各地に埋められたこのスピットファイアを70年ぶりに掘り起こそうというプロジェクトが、ミャンマー政府と熱心な航空機愛好家の協力の下で始まろうとしている。

 スピットファイア発掘プロジェクトは、これまでに目撃証言などを集めた調査結果に基づき、旧首都ヤンゴン(Yangon)、北部カチン(Kachin)州、中部マンダレー(Mandalay)州の3か所で行われる予定。プロジェクトに参加するミャンマー人実業家のトゥー・トゥー・ゾー(Htoo Htoo Zaw)氏によれば、今回は2年かけて約60機を掘り出す計画だという。

 発掘に成功したスピットファイアのうち何機かは、英国に返還される見込みだ。「英国とミャンマーとの絆を強めたい。世界中の何百万というスピットファイアのファンにも楽しんでもらえればいい」と、トゥー・トゥー・ゾーさんは話す。

 ビルマは1948年のビルマ独立まで、英国を宗主国としていた。1942~45年には日本の占領下にあり、その間に英国はビルマから撤退している。

■熱心な航空ファンの努力が実を結ぶ

 スピットファイア発掘が決定するまでには、ある英国人男性の10年以上に及ぶ尽力があった。熱烈な航空機愛好家のデービッド・カンダル(David Cundall)さんだ。レーダー技術を用いてミャンマー国内の旧英空軍基地をしらみつぶしに調査して回ったのだ。

「僕はしがない農民で、億万長者でもない。(スピットファイアの探索は)とても大変だったよ」と、カンダルさんは今年、英紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)に語っている。「15年以上かかった。でも、ついに探し当てたんだ」

 1938~48年に、英国ではおよそ2万機のスピットファイアが製造された。第2次世界大戦中の1940年には英本土防衛をかけた英独軍の空中戦バトル・オブ・ブリテン(Battle of Britain)で活躍し、今でもファンが多い。

「スピットファイアは美しい。外国の地で朽ち果てさせてはいけない。バトル・オブ・ブリテンで英国の窮地を救ってくれた戦闘機なんだ。絶対に保護するべきだ」とカンダルさんは訴えている。(c)AFP