【10月15日 AFP】(写真追加)高所からパラシュートを使って飛び降りる「フリーフォール」の第一人者、オーストリア人のフェリックス・バウムガルトナー(Felix Baumgartner)氏(43)は14日、ヘリウムを詰めた気球で高度12万8097フィート(約3万9044メートル)に上がったカプセルからダイビングを行い、飛び降りてから4分20秒後にパラシュートを開いて米ニューメキシコ(New Mexico)州ロズウェル(Roswell)に無事に着地した。

 ジャンプの数時間後に行われた記者会見で、最高落下速度は音速の約1.24倍にあたる時速1342キロ程度に達したことが明らかにされた。音速は高度によって変わるため、現時点でこれ以上正確な速度は分からないという。

 バウムガルトナー氏は、着地後最初のインタビューでオーストリアのドイツ語テレビServusTVに、「私の肩から20トンの重荷が下りたような気がする。私はこのために7年間準備してきた」と語った。

 ジャンプは当初9日に予定されていたが、強風のため延期されていた。14日の挑戦もヘルメットのバイザーのトラブルで直前に中止に追い込まれかけたが、バウムガルトナー氏は「今日のように素晴らしい出だしの日にもちょっとしたトラブルはある」と述べ、「ありとあらゆる準備を重ねてきたことが、バイザーのトラブルのために失敗したとしたらどうだろう。私は最終的にジャンプする決断をした。正しい判断だったと思う」と振り返った。

 ジャンプの少し前、世界中に中継された映像の中で、米宇宙飛行士故ニール・アームストロング(Neil Armstrong)氏をほうふつとさせる雑音の入った無線通信でバウムガルトナー氏は「自分の小ささを(思い知るには)、思いっきり高いところに(行く)必要がある」と話した。

 バウムガルトナー氏は2時間以上かけて上空に上がり、1961年に打ち立てられた有人気球による最高到達高度11万3740フィート(約3万4668メートル)を破った。高度12万フィート(約3万6576メートル)からジャンプする計画だったが、気球はさらに高度を上げ、地上から3万9000メートル以上の高さに達した。

 宇宙服のような与圧された特殊な装備がバウムガルトナー氏を零下68度という低温から守った。ヘルメットのヒーターが故障し、吐いた息でヘルメットのフェースプレートが曇るという小さなトラブルはあったものの同氏と約100人の支援チームは断行を決断し、結果的にほぼ完璧なジャンプとなった。支援チームには、1960年に10万2800フィート(約3万1333メートル)のフリーフォール高度の記録を打ち立てたジョー・キッティンジャー(Joe Kittinger)元米空軍大佐もいた。

 14日は、米国のパイロット、チャック・イエーガー(Chuck Yeager)氏が有人機で初めて音速を超えてからちょうど65年目でもあった。(c)AFP/Michael Thurston