【10月5日 AFP】カナダ・ケベック(Quebec)州サンティアサント(Saint-Hyacinthe)にあるゴルフコース「ラ・プロビデンス」では、訪れた客たちが嗅覚を使ってトイレを探そうとしても見つけられないだろう。このゴルフコースのトイレは無臭だからだ。簡素な木造りの屋外トイレの床下で、腐敗した有機物質をせっせと堆肥(コンポスト)に変えているのは、実はミミズの大群だ。

 「ミミズの力」を生かしたトイレの設置は、北米では「ラ・プロビデンス」が初めてだ。設計したのはフランスのメーカー、エコスフェール・テクノロジーズ(Ecosphere Technologies)。糞便分解役のシマミミズたちもフランスからやって来た。最初におよそ500グラムのミミズが到着し、残りはモントリオール(Montreal)東方のサンティアサントで農学者のエレーヌ・ボーモン(Helene Beaumont)さんが繁殖させた。その後ミミズたちは、このトイレの下に敷かれたわらと排泄物の間に置かれて育った。「ミミズたちが1日に食べる排泄物の量は、自分の重さと同じくらいだ」とボーモンさんは言う。

■水も電気も不要、究極のエコトイレ

 古いトイレに付き物の悪臭は、尿と大便が混ざることが原因だ。しかし「ミミズトイレ」なら、便器の足元にあるペダルを踏めば、コンベヤーベルトが動き出して尿と大便を分け、尿は砂でろ過されて大便だけがミミズたちのもとに届く仕組みになっている。ミミズたちの働きに加えて、通気システムも強力で臭いが遠ざかるので消臭効果も倍増する。

 さらに「ミミズトイレ」は水も電気も不要なうえ、メンテナンスが必要となるまでに1万回の使用に耐える。このため、欧州では山荘や自然公園などインフラが整備されていない場所で多くの導入例がある。広大な自然の中に無数の小屋やキャンプ場、スキーロッジ、メープルシロップの製糖所などが点在するカナダは、この技術の理想的な市場といえるだろう。

■ライバルは乾燥式トイレ

 一方、乾燥式コンポスト型のトイレは、個人所有の山小屋などを中心に、すでにカナダでも何種類か見かけることができる。多くは排泄物をおがくずやココナツの皮、あるいはピートモスというコケなどに混ぜて好気性処理を促進し、水分を吸収、臭いを抑えるタイプだ。分解過程は通常、浄化槽のような湿気の強い汚物処理システムよりも速い。

 コンポストトイレの価格は平均1800カナダドル(約14万円)程度だが、競合するエコスフェール社の「ミミズトイレ」は1棟4万カナダドル(約310万円)と決して安くはない。しかし、同社営業担当のフレデリック・ノー(Frederic Neau)氏は販売が伸びるにつれて価格は下がるだろうと話す。しかも乾燥式コンポスト型トイレがメンテナンスや取り出しの処理などを必要とするのに比べ、「ミミズトイレ」のメンテナンスは年に1回、ミミズの様子を確認するだけでよいため、維持費もほぼかからないという。(c)AFP/Michel Viatteau