【10月5日 AFP】ヤマアラシのようなとげ、オウムのようなくちばし、そして吸血鬼のような牙を持った新種の小型恐竜が見つかったことが3日の国際動物学誌ズーキーズ(ZooKeys)電子版に発表された。

 発表を行ったのは米シカゴ大学(University of Chicago)の恐竜研究を専門とする古生物学者、ポール・セレノ(Paul Sereno)氏。同氏はこの新種化石を数十年前に発見していたが、今回初めて公表した。

 この恐竜の化石は1960年代にアフリカ南部にある赤色の岩から切り出された。セレノ氏は1983年に米ハーバード大学(Harvard University)でその化石標本を初めて目にした。

 セレノ氏は米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に、最初に化石標本を見た時は「目玉が飛び出るほど驚いた。新種であることは明らかだった」と語った。

 セレノ氏によると新種恐竜は体長60センチほどで体重は飼い猫よりも軽かったという。上下の顎には縦長の歯が並んでおり、ハサミの刃のように互いにこすれて鋭利さを保つ仕組みになっていた。セレノ氏はこの新種を「アフリカの厚い顎」を意味する「ペゴマスタックス・アフリカヌス(Pegomastax africanus)」と命名した。

 ペゴマスタックスはヘテロドントサウルスと呼ばれる小型草食恐竜に属する。一部の科学者はヘテロドントサウルスが肉または虫を食べていたと主張しているが、セレノ氏の考えではペゴマスタックスが持つ吸血鬼のように鋭利な犬歯は敵から身を守ったり、交尾相手をめぐって戦ったりする時に使われたとされている。

 ペゴマスタックスは約2億年前のジュラ紀に生息しており、こういった小型草食恐竜は当時、地球全域に広く分布していた。一般での知名度はゼロに等しいが、セレノ氏は論文で「ペゴマスタックスとその近縁種は当時最も高度に発達した草食動物だった」と述べている。(c)AFP