【10月3日 AFP】欧州連合(EU)が実施した域内の原子力発電所に対する耐性評価(ストレステスト)で、地震対策や緊急安全システムの不備など改善を要する点が数百に上ることが、欧州委員会がまとめた報告書案で2日、明らかになった。

 AFPが入手した同報告書案によると、EUが行った英仏スペインを中心とする域内の原発134基の耐性評価で安全面での欠陥点が多数見つかり、全ての不備の改善コストは100億~250億ユーロ(約1兆~2兆5000億円)に上ることが分かった。

 特に重要とされた11の安全要件の1つ、地震計測装置が設置されていないと指摘された原発は10基、地震計測装置の更新が必要とされた原子炉は約50基あった。欧州第1の原子力大国フランスでは、19か所の原子力発電所が大規模な水害や地震に備える安全設備が不十分だとされた。

 またドイツの12か所の原発で「重大災害時の管理ガイドライン」が不十分だった他、フィンランドとスウェーデンの原発各1か所で停電時に自動的に作動する予備システムがないことが指摘された。

 報告書案は、全ての改善点について厳しく監視し、2015年までに改善を終えるよう求めている。ただし、閉鎖勧告が出された原発はなかった。

■「福島を教訓に原発事故リスク軽減を」

 EUの耐性評価テストは、2011年3月の福島第1原発の事故を念頭においたもので、洪水、地震、飛行機事故など、「通常の安全システムや冷却装置」が停止した状況を想定している。

 欧州では、30キロ圏内の人口が10万人を超える発電用原子炉は111基を数える。このため、報告書案は「EUは福島の事故を教訓として、欧州における原発事故リスクをさらに軽減しなければならない」と指摘している。

 全25ページの報告書案の作成には、原発が稼働しているEU内の14か国と原発新設を計画しているリトアニア、域外からスイス、ウクライナ、クロアチアが参加した。

 報告書案は4日に欧州委のギュンター・エッティンガー(Guenther Oettinger)委員(エネルギー担当)から正式に発表された後、18~19日のEU首脳会議で最終的に承認される運びだ。

 今回の報告書とは別に、テロ攻撃を想定した原発リスクの耐性評価も進められている。(c)AFP/Claire Rosemberg and Christian Spillmann