【9月19日 AFP】(一部更新)スウェーデンのヨーテボリ大学(University of Gothenburg)は18日、妊娠・出産を可能にすることを目的とする母から娘への子宮移植手術に世界で初めて成功したと発表した。

 子宮頸がん治療のため子宮を摘出した女性と、生まれつき子宮がない女性の2人が前週末に母親の子宮を移植する手術を受けた。移植を受けた女性は共に30代だという。

 同大の研究チームを率いたマッツ・ブレンストレム(Mats Braennstroem)教授(産婦人科学)によると、10人以上の外科医からなるチームが手術を行い、合併症もなく終了した。移植を受けた2人は疲れているものの、術後の経過は順調だという。子宮を提供した母親2人は既に立ち上がって歩けるほどに回復しており、数日後には退院できる見込みだと同教授は話している。

 移植手術前にはそれぞれのパートナーの精子を使って体外受精した2人の受精卵が冷凍保存されており、これから1年間経過観察したのち、子宮内に戻す予定だという。したがって本当の意味で移植手術が成功したと言えるのは2014年に2人が赤ちゃんを無事出産してからだとブレンストレム教授は語っている。

 同教授は2人が妊娠に成功する確率には言及しなかったが、通常の体外受精による不妊治療で受精卵移植後に出産する割合は25~30%だと述べた。

 また同教授は、移植臓器の拒絶反応を抑える免疫抑制剤の服用を続けずに済むよう、移植された子宮は「最高で2人」を出産した後に摘出する方針だと明らかにした。チームのミカエル・オラウソン(Michael Olausson)医師は子宮移植による拒絶反応の発生確率を他の臓器移植と同じ約20%としている。

 移植を受けた女性2人は、自身とそのパートナーの生殖能力に問題がないといった候補者としての条件を確認するための長い審査過程を経て選ばれた。2人の名前は明らかにされていない。スウェーデンではさらに8人の女性への子宮移植が今年秋から来年春にかけて予定されている。

 ブレンストレム教授は、この移植法は生まれつき子宮がなかったり、子宮に損傷を受けた若い女性の妊娠を助けるためのものであって、妊娠・出産可能な年齢を超えた女性を助けるためではないと強調している。

 1999年に始まったこのプロジェクトで、科学者や医師、その他専門家の約20人からなるチームはこれまで、マウスや霊長類などを対象に子宮移植手術を行い、移植後の妊娠・出産に成功してきた。

  子宮移植手術は、2011年にトルコの医師チームが世界で初めて成功した。だが、子宮移植は生きたドナー(臓器提供者)を必要とすることなどから問題視されることも多い。スウェーデン中央倫理審査委員会(Central Ethical Review Board)は当初、同プロジェクトの実施を認めていなかったが、今年5月になってプロジェクト監視のための特別委員会の設置を条件に移植手術実施の許可を出した。(c)AFP/Pia Ohlin