【9月4日 AFP】かみつき行為で伝染する顔面腫瘍により絶滅の危機にさらされているタスマニアデビルだが、タスマニアデビルの性格が変われば危機から救われるかもしれないとの研究が、英生態学会(British Ecological Society)の発行する英科学誌「Journal of Animal Ecology」に発表された。

 タスマニアデビルの野生の個体数は、1996年に初めてデビル顔面腫瘍性疾患(DFTD)が現れて以降、90%以上減少した。この疾患に対しては治療法もワクチンもまだ見つかっていない。

 タスマニア大学(University of Tasmania)のロドリゴ・ハメデ(Rodrigo Hamede)氏率いる研究チームは、4年間に及ぶ調査の末、興味深い事実を確認した――タスマニアデビルは、かみつかれる回数が少ないほど、この疾患に感染する可能性が高かったのだ。

「驚くべき、そして直感に反する」結果だったとハメデ氏は語る。

「大半の感染症では、スーパースプレッダー(広める能力が高い個体)と呼ばれる、伝染の要因となる少数の個体が存在する。だがわれわれが発見したことは、より攻撃的なタスマニアデビルが、スーパースプレッダーならぬスーパーレシーバー(受け取る能力が高い個体)になっていたということだった」

 ハメデ氏によると、より攻撃的なタスマニアデビルは相手にかみつかれるよりも、相手をかみつくことの方が多く、その結果としてより弱いタスマニアデビルをかみついた際に感染してしまうという。

「『内気』と『勝気』を区分するためにデビルの態度についての詳細なデータを集める必要がある。その情報を使って、より攻撃的でないデビルが自然淘汰の中で増えるような管理体制を整え、疾患の感染拡大を弱めることができるかもしれない」

 そのためにもまずはタスマニアデビルの行動を観察することが不可欠であるとハメデ氏は語った。(c)AFP