【8月31日 AFP】低カロリー食を続けると健康にはなるが、寿命が延びることはないとの結果が、23年間にわたるサルを使った実験で示されたと、米国立老化研究所(National Institute on AgingNIA)が29日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。

 論文によるとNIAでは1987年から、平均寿命が27年比較的長く個体によっては40年生きるアカゲザルを使って長期の実験を行ってきた。実験ではさまざまな年齢のアカゲザルに「普通食」と、カロリーが30%低い食事を継続して与えた。ビタミンやミネラルのサプリメントは両方のグループに与えた。どちらのグループも野生のアカゲザルよりも長生きし、体重も多くなった。

 健康度でいえば低カロリー食のグループでは普通食のグループよりも、糖尿病や心疾患、がんの発症例が少なく、またオスではコレステロール値も低くなった。しかし、NIA老年学実験研究室のラファエル・デ・カボ(Rafael de Cabo)氏によると、少なくともアカゲザルにおいてはこうした健康度が直接、寿命の長さに影響してはいなかった。

 この実験結果は、他の研究結果と矛盾しているように見える。たとえば米ウィスコンシン国立霊長類研究センター(Wisconsin National Primate Research CenterWNPRC)が現在行っている実験では、カロリー制限をしたアカゲザルのほうが長生きするという結果が出ている。

 WNPRCのリッキー・コールマン(Ricki Colman)上級研究員は、2つの研究には相違点が多く、実験結果の矛盾はそのためだとの見方を示した。特に、WNPRCでは普通食グループのサルに人間の通常の状態と同様、自分で好きなときに好きなだけ餌を食べられるようにしたのに対し、NIAの普通食グループでは人間の理想的な食事習慣を模して決まった量の餌だけを与えていた。このためNIAの実験では普通食グループのサルも、低カロリー食グループのサルと同じくらい長生きしたのだとみられるという。また、WNPRCの実験ではサルにサプリメントは与えていなかった。

 一方、デ・カボ氏は2つの異なる研究結果を比較すれば説得力のある答えが見えてくるとして、健康な食事習慣によって寿命は延びるが、低カロリー食では病気の発症を遅らせることはあっても寿命の延長にはつながらないという結論が導き出されるだろうと述べている。(c)AFP