【8月23日 AFP】日本たばこ産業(Japan TobaccoJT)は22日、欧州連合(EU)が制裁対象としているシリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権に関係する企業にJTの子会社がたばこを輸出し、制裁違反の疑いがあるとしてEU当局の調査を受けていると発表した。

 株式の50%を政府が保有するJTは、AFPの取材に対し、子会社「JTインターナショナル(JT InternationalJTI)」(本社スイス・ジュネーブ)はなんら違反行為を行っていないと述べた。

■アサド大統領のいとこの出資企業、弾圧にも資金提供か

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street JournalWSJ)が入手した企業文書によると、JTIは2011年5月、アサド大統領のいとこたちにあたるマフルーフ(Makhlouf)一族の出資する企業にたばこを輸出した。

 EUと米国はアサド政権による反体制派弾圧にマフルーフ一族が資金提供しているとみており、EUは2011年5月23日、一族の継承者ラミ・マフルーフ(Rami Makhlouf)氏とその兄弟らに金融制裁を科した。

 だが、JTIはその4日後に、マフルーフ一族が出資していることを知りながら「シリア免税店(Syria Duty Free Shops)」にキプロスの業者経由でたばこ45万カートンを輸出。また同じ5月のうちに、シリアの国営たばこ企業に銘柄「ウィンストン(Winston)」420万カートンも出荷していたという。

 WSJは、シリア政権が非正規兵の部隊へ賃金の代わりにたばこを与えているとする反体制派の話を紹介している。たばこは正規価格よりも高く売れ、現金を入手するためにも使われているのだという。

■JT「違反事実ない」

 一方、JTはAFPの取材に対し、JTIが違反した事実はないと述べた。

 JTは声明を発表し「JTIは、EUなどによる各種制裁措置を遵守し、適法・適切に事業運営を行っており、シリアへの製品出荷は停止している。また、EU当局による調査に対しては、積極的な資料・情報の提供などで全面的に協力している」と述べた。

 JT広報によると、「シリア免税店」の株主の1人が制裁リストに掲載されている人物と同一である可能性が判明した時点で、JTIは直ちに出荷を停止したという。だがJT広報は、出荷を停止した具体的な日時は明らかにしなかった。

 また、EUの制裁決定に従うことを決めた「2012年2月以降、シリアに対する出荷は全面的に停止させている」とJTI広報は説明した。(c)AFP