【8月20日 AFP】国民の大多数がイスラム教徒のパキスタンで、ダウン症のキリスト教徒の少女が、イスラム教の聖典コーラン(Koran)の章句が記された書籍を燃やしたとして冒涜(ぼうとく)罪の疑いで逮捕された。

 AFPの取材に匿名で応じた警察関係者が19日明かしたところによると、リムシャ(Rimsha)という名前の10代のこの少女は16日、コーランの章句やイスラム教の言葉が記された、燃やされた形跡のある書籍の一部とみられる紙片を所持しているところを目撃され、イスラム教を冒涜した容疑で逮捕された。

 パキスタンでは冒涜罪で有罪と認められた場合、死刑になる可能性がある。少女は17日に首都イスラマバード(Islamabad)の裁判所に出廷し、裁判所は14日間の勾留延長を認めた。次回出廷は今月末ごろになる見通しという。

 国内では、怒った一部のイスラム教徒らが少女の実刑判決を求めるデモを行った。少女が両親と住んでいたイスラマバード近郊のメフラバード(Mehrabad)には約800人のキリスト教徒が暮らしているが、イスラム教徒の抗議行動が激化したため一時的に避難を余儀なくされたという。

 人権団体「全パキスタン少数派同盟(APMA)」は、少女はわずか11~12歳でダウン症だとして、穏便な解決を求めた。

 事件をきっかけに、パキスタン国内で宗教的不寛容が広がりつつある問題をめぐって議論が再び活発化しそうだ。パキスタンでは冒涜罪は非常に厳格な取り締まりの対象で、イスラム教や預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)を中傷したり、コーランを汚す行為は死刑に相当する罪とみなされる。

 人権団体によると、「冒涜法」はささいな争いごとの解決にも適用されがちだが圧倒的多数の国民に支持されているため、パキスタン政府に同法を改正する考えはないという。(c)AFP