【8月17日 AFP】世界の海はそこに生息する生物を守りながら、人間に食糧や娯楽を同時に提供できるのだろうか――米国とカナダの共同チームが策定した世界の国・地域の海の「健康度」を表す指数が、15日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 米カリフォルニア大学サンタバーバラ校(University of California Santa Barbara)などのチームは、世界に171ある排他的経済水域(EEZs)の概況を評価した。世界の海全体に対する、食糧供給度、沿岸部の生計や経済を支える力、水のきれいさ、沿岸部の保護、伝統漁法、炭素貯蔵、観光、生物の多様性など10項目にわたった。

 EEZs全体では100ポイント中60ポイントの評価で、「大きく改善の余地がある」とチームは警告した。

 チームは「海に対して人間が大きなマイナス影響を与えており、沿岸部の人口とネガティブな意味で相関している」と指摘した。現状では、世界人口70億人の約半分が沿岸に近い場所に住んでいる。

「健康な海」と評価されたのは、南太平洋にある無人島、ジャーヴィス島(米国領)で100ポイント中86ポイントだった。他にも上位には太平洋の無人島が並んだ。

 人間が住んでいる地域で最も健康な海はセーシェルとドイツの海、一方で最も不健康な海はシエラレオネの海という結果が出た。セーシェルとドイツはともに73ポイント、シエラレオネは最低の36ポイントだった。

 開発途上国で上位に入ったのは、12位のセーシェルとスリナムのみ。開発途上国は西アフリカ、中東、中央アメリカなど概してポイントが低く、北欧やカナダ、オーストラリア、日本などの富裕国はポイントが高い傾向がみられた。

 論文共著者であるカリフォルニア大学海洋評価計画センターのベンジャミン・ハルパーン(Benjamin Halpern)氏は、「海の健康度を左右する、非常に異なる様々な側面――環境、社会、経済、政治などを定量的に、しかも直接的に比較して、全体を合わせることができたのは初めてだ」と述べている。ただしこの指標は、各国が自国のEEZをどのように管理しているかという点だけに絞ったもので、他国のEEZに及ぼしている影響については考慮していないと同氏は補足した。(c)AFP