【7月17日 FAP】トイレットペーパーやバターを買うために何時間も列に並ばなくてはならない――そんな共産党政権下のポーランドの「退屈な日々」を追体験できる「モノポリー」風ボードゲームの日本語版が、間もなく発売される。制作したのはポーランド政府機関で、近現代の歴史を記録しナチス・ドイツ(Nazi German)政権下と社会主義時代の犯罪を訴追する「国民記録機関(IPN)」だ。

 このボードゲーム「コレイカ(Kolejka、行列)」は、「世界で最も退屈なゲーム」と呼ばれているという。IPNの歴史学者トマシュ・ギンター(Tomasz Ginter)氏は「70年~80年代にかけて社会主義国家で行列に並んだ経験のある人に聞いてみればいい。誰だって『あんな退屈なことは他にない』と答えてくれるよ」とユーモアたっぷりに語る。

「毎日の食材を買うのに6時間並ぶ、なんていうのが日常だった。うっかり家具が欲しいなんて思おうものなら数週間は並ばされたものさ!」

「モノポリー」は資本主義のルールに則ったゲームだが、「コレイカ」は計画経済下でいかにして生き延びるかを教えてくれるゲームだ。慢性的な商品不足に悩まされ、肉は稀少品でオレンジは珍品。何時間も、ときに何日間でさえも列に並ぶのが当たり前で、闇市場では定価の2倍以上を支払わなければ必需品が買えない――。

 制作の意図は、鉄のカーテン(Iron Curtain)がなくなる1989年以前にはごく簡単な日用品の買い出しに付き物だった「退屈さ」と「不条理さ」を後世に伝えることだという。

 当時は食料品からガソリン、たばこ、洗剤、靴さえもが配給制で、商店の棚には地元の共産主義工場が生産するマスタードの瓶や酢のボトルがあふれかえっていた。

 ゲームに勝つには、ショッピングリストに記載された商品を全て買い揃えなくてはならない。「でも、お店に何もないから買えないのよ」と、IPNのプレゼンテーションでゲームを試遊した英語講師の女性(52)は笑った。

 ポーランド語版は発売から1年半で2万本が完売。現在、ポーランド語に加え日本語、英語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語に対応した多言語版、計2万5000本が製造中だ。この新版には、ゲームの持つ歴史的背景を紹介し、人々が買い出しに「戦略」を用いなければならなかった時代について解説する小冊子も付属している。(c)AFP/Anna Maria Jakubek