【7月6日 AFP】子どもの時に尻や体を叩かれるといった体罰を受けたことがある人は、そうでない人よりも成人後に気分障害や不安障害、依存症などの精神疾患で悩まされる可能性が高くなるとしたカナダの研究が、2日の米小児科専門誌「ペディアトリクス(Pediatrics)」で発表された。

 研究は、2004~05年にかけて全米20歳以上の米国人653人を対象に行われた、アルコールおよび関連障害にまつわる疫学的調査「National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions」からのデータを用い、心理的問題と体罰の関連性について初めて調べた。

 研究では、子どもの体を押したりすることや、突き飛ばし、平手打ち、叩くなどの行為が体罰として含まれた。以前の研究でも体罰を受けたことのある子どもは、受けていない子どもよりも攻撃的に育つとした結果が示されていたが、それらの研究ではより深刻な暴力も含まれていたのに対し、今回は「体罰の影響」のみを調べるために激しい暴力や性的虐待などは対象から外された。

 今回の研究によると、抑うつや不安障害、双極性障害、摂食障害といった疾患の2~5%が幼少時の体罰に起因しているし、さらに人格障害、強迫性障害、知的障害といったより深刻な問題ではこの数字が4~7%となった。

 米ニューヨーク(New York)にあるコーエン小児医療センター(Cohen Children's Medical Center)の小児科医ロヤ・サミュエルズ(Roya Samuels)医師は「体罰に訴える親は、彼ら自身が抑うつや精神障害のリスク下にある可能性がある」と述べ、一定の疾患リスクだけでなく、聞き分けの悪い子どもと対峙する際の方法についても遺伝的な影響があると話す。

 一方で研究チームは、体罰によってこれら障害が引き起こされることは立証しておらず、そうした体罰の「記憶」と精神疾患の発症率に何らかの関連性があることを示したのみとした。

 米国人の約半分は子どもの頃に体罰を受けた記憶があるという。だとすれば「大半の子どもには立ち直る力があるということになるが、繊細な子どもたちにとっては、体罰が精神的な問題を生むリスクを高めることになる。それゆえ体罰を最小限に抑えるか、もしくはすべて無くすことが重要である」と米ニューヨークの医療センター、ノースショア・ロングアイランド・ジューイッシュ・ヘルス・システム(North Shore-Long Island Jewish Health System)精神科長のビクター・フォルナリ(Victor Fornari)氏は述べている。

 子どもをしつける時には、「良い行動をした場合には褒めたり報酬を与えるなどする」「好ましくない行動をした時には報酬を取り去る」といった方法がより望ましいという医師らの見解を同研究は改めて指摘した。(c)AFP/Kerry Sheridan