【7月3日 AFP】心地よい夏の夜、スペイン・マドリード(Madrid)の公園に集まり、野菜のソテーやミックスサラダの夕食を野外で楽しむ30人ほどの人々――。だがこの夕食、材料はなんと生ごみ。文字通りの「ジャンクフード」だ。

 集まっていたのはごみの減量に取り組む環境活動家らだ。時折この「ジャンクフード会」を開いては、周辺の人々を招待している。

 夕食会の前夜、活動家たちはショッピングカートを押しながら食料品店のごみ捨て場をまわっていた。1時間後、ようやく青果店の外のごみ箱に、まだ食べられそうな野菜や果物を見つけた。この日の収穫は葉物からトマトやニンジン、カリフラワー、バナナ、パイナップル、ビワ、アプリコットなど数キロ分だった。

 食事会は、まだ新鮮なうちに捨てられていく大量の食料品を見かねた人々により、2010年に開始された。「責任ある、控えめな消費行動を推進するのが目的。無限の資源なんてないし、より必要としている人と分かち合わなければいけない。たくさんの人がいるのだから」とメンバーのミゲル・カレノ(Miguel Carreno)さんは言う。

 この運動はもともと米国で「フリーガニズム(freeganism)」として1990年代に始まったが、不景気と経済危機に苦しむスペインで、また新たな意味を獲得した。グループの設立メンバーの1人、チョミン・カルボ(Txomin Calvo)さんは「抗議だけで終わらせないために、経済的に苦しい状況の人々に無料で食事を提供することにした」と話す。

 スペインでは現在、労働人口の4人に1人が失業している。2011年に貧困線を下回った国民は全体の21.8%にも上った。

 カルボさんと同じくグループ設立メンバーのルイス・タマヨ(Luis Tamayo)さん(43)は、「良い食材がたくさん手に入る日もあれば、ほとんど何も見つからない日もあるよ」と語る。

 中にはごみ捨て場からではなく、賞味期限を過ぎて寄付された食材もあるという。食材は全て殺菌済みだ。

 食事会の話を友人から聞きつけたという、現在失業中のペペ・ロドリゲス(Pepe Rodriguez)さん(44)は、「食べるのには全く抵抗を感じないね。捨てられている食べ物でもまだ食べられるってことは皆分かっているから。これはごみなんかじゃないよ。すごくおいしい」と語った。

 グループの目標は、食べ物の廃棄を減らすことだ。スペインでは、国民1人につき食料品163キロ分が毎年捨てられている。欧州連合(EU)全体ではさらに多い179キロがごみとなっている。(c)AFP/Anna Cuenca