【6月20日 AFP】ウクライナのレナト・クジミン(Renat Kuzmin)最高検次長検事は19日、ユリヤ・ティモシェンコ(Yulia Tymoshenko)前首相を1996年の議員殺害事件に関与した罪で新たに起訴する意向を明らかにした。

 クジミン氏は18日付のウクライナ版コメルサント(Kommersant)紙に掲載されたインタビューの中で、起訴に当たっての唯一の障害は、背中の強い痛みを訴えて入院しているティモシェンコ前首相の健康状態のみだと述べ、立件に自信をみせた。

 1996年にウクライナ東部ドネツク(Donetsk)の空港でイェフゲン・シェルバン(Yevgen Shcherban)議員とその妻が殺し屋の凶弾に倒れたこの事件で検察当局は、ティモシェンコ前首相とその盟友だったパブロ・ラザレンコ(Pavlo Lazarenko)元首相の関与を疑っている。

 クジミン氏はコメルサント紙に「ティモシェンコがこの殺人に関与していたことの十分な証拠がある」と述べ、前首相を起訴する意向を示した。クジミン氏によればシェルバン議員は事件当時大手ガス会社UESUUnited Energy Systems of Ukraine)の社長だったティモシェンコ前首相と対立しており、シェルバン議員の地元の企業にUESUのエネルギー資源を買い取るよう働きかけていたという。

■ティモシェンコ氏が殺人を采配?

 クジミン氏は「ラザレンコとティモシェンコのビジネスのやり方をシェルバンは公然と批判していた」と述べた。ラザレンコ元首相は横領とマネーロンダリング(資金洗浄)の罪で有罪判決を受け、米カリフォルニア(California)州で服役している。

 クジミン氏は、この対立はティモシェンコ前首相の出身地である同国中部ドニエプロペトロフスク(Dnipropetrovsk)と工業の中心地ドネツクのそれぞれの政治家とオリガルヒ(新興財閥)との間で起きた闘争だと説明し、「シェルバンの排除がティモシェンコの利益にかなうことを示す証拠は十分にある。彼女の支配下にあった口座に金の出入りがあったことを確認できる証拠や、彼女がこの殺人を采配し、資金を出したという直接的な証言もある」と述べた。

 ティモシェンコ前首相が代表を務める政党「祖国(Batkivshchyna)」の広報担当者は19日、AFPの取材にクジミン氏の発言は「ヒステリー」だと非難し、「ウクライナの抑圧的な体制は、どんなにばかげたものであってもビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)大統領の命令は是が非でも実行しようとしていることを(クジミン氏の発言は)示している」と述べた。

 ティモシェンコ前首相は職権乱用罪で禁錮7年の刑を受けて刑務所に収容されているが、この判決はヤヌコビッチ大統領の命令に従ったものだと主張している。この判決によりウクライナと欧州連合(EU)の関係は大きく悪化している。(c)AFP/Anya Tsukanova