【6月18日 AFP】米ニューヨーク(New York)の上空が航空機と野鳥との間で戦場と化している――周辺の空港を利用する多数の航空便と野生のカナダガン(Canada geese)が「共存」するには同市は狭すぎるとし、米国農務省(US Department of AgricultureUSDA)が野鳥の駆除に乗り出しているが、この動きについて動物愛護活動家らからは批判が集まっている。

 2009年、ガンの群れと衝突したUSエアウェイズ(US Airways)1549便がハドソン川に緊急着水する事故が起きた。この「ハドソン川の奇跡(Miracle on the Hudson)」と呼ばれる事故では、乗員乗客全員が無事生還したが、以来カナダガンは当局の監視対象となり、毎年初夏になると担当チームがマンハッタン(Manhattan)地区インウッドヒル(Inwood Hill)公園などでガンの駆除を実施している。6~7月は羽が生え替わる季節でガンは飛ぶことができないため、駆除作業はあっという間に終わる。

 ガンの愛護団体グースウォッチNYC(GooseWatchNYC)のデビッド・カロプキン(David Karopkin)さん(27)らは、毎朝夜明けから都市部周辺に生息するカナダガンの群れを観察しており、駆除作業を発見すると、インスタント・メッセージでメンバーに一斉伝達するという。現在、研修中の弁護士というカロプキンさんは、駆除は恐ろしいことだと述べ、「(早朝は)ベッドで過ごさないことに決めた。(駆除について)証言したい」と意気込みを語った。体を張った駆除作業の阻止はしない方針だが、現場に駆けつけ、駆除活動を撮影することで十分な抑止力になると考えている。

 周辺のケネディ(John F. Kennedy)国際空港やラガーディア(LaGuardia)空港、ニューアーク(Newark)国際空港では、多数の航空便が24時間離着陸を繰り返し、上空を行き交う。しかし驚くことに、この地に生息する野生動物は意外と多い。高層ビルにはタカが巣を作り、コヨーテも目撃されている。またブロンクスでは希少種のカエルも発見され、湿地帯の広い範囲には渡り鳥が多く飛来する。

 ニューヨークの都市部に生息するカナダガンは約2万~2万5000羽とされる。農務省行政官のリー・ハンバーグ(Lee Humberg)氏は電話インタビューで、生息数が適正水準を大幅に上回っているとの見解を示し、生息可能な場所や苦情などを総合的に検討した上で、同省は4000~5000羽まで削減する目標を設定しているとした。

 直近の任務は、各空港から8~11キロの範囲における駆除活動で、公式データによると、前年は11か所で確認された654羽のうち、575羽が駆除されたという。

 ハンバーグ氏は、「カナダガンが問題視される理由は、体重1.3キロ超のその大きさにある。ジェットエンジンの設計上、バードストライクに耐えられる鳥の体重は1.3キロ以下だ」と指摘。またカナダガンには高い生存力や適応能力があり、現状を食い止めるのは難しいとしながら、ガンがニューヨークに飛来することを責める気持ちはないとコメントした。

 一方のカロプキンさんは、カナダガンは長距離を飛ぶことができ、ニューヨーク市上空(の航空機の飛行経路)には、あらゆる場所から飛来しており、毎年実施している駆除活動は時間の無駄だと批判した。

「航空事故対策として鳥を駆除するのは全く無意味だ」

(c)AFP/Sebastian Smith

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