【6月11日 AFP】悲劇の探検隊として知られる英国のスコット南極探検隊の隊員が約100年前に書き残した記録から、この隊員がペンギンの「性的堕落」に衝撃を受けていたことが明らかになった。

 9日の英紙ガーディアン(Guardian)によると、1911年から12年にかけての南極の夏にアデア岬(Cape Adare)で観察したアデリーペンギンの記録を残した探検隊員ジョージ・マレー・レビック(George Murray Levick)は、ペンギンの同性愛行為や幼鳥の虐待、オスのペンギンによるメスの死骸との交尾などを発見して非常に恐怖したという。レビックはこの観察結果を一般の人から隠すため、当初ギリシャ語で記録を書き残していた。

 レビックは後に英語で書き直した論文の中で、雄のアデリーペンギンが「10羽前後で徒党を組み、丘のはずれに行ってはそこに住む他のペンギンに堕落した性行為を仕掛けて苦しめていた」と述べている。

 スコット南極探検隊はノルウェーのアムンゼン隊と南極点初到達を競い、1910~13年にかけて遠征を行った。スコット隊はロバート・スコット(Robert Scott)隊長以下5人が南極点を目指して1912年1月17日に到達したが、ロアール・アムンゼン(Roald Amundsen)隊が1か月以上前に到達していた。さらにスコットら5人は帰路で遭難し、全員死亡した。

 一方、南極点に向かわなかったレビックは、探検隊の船テラノバ(Terra Nova)号が氷に阻まれ救助に向かえない中、他の5人と共に南極の一冬を氷穴の中で耐えしのいで生還した。

 帰国したレビックはアデリーペンギンの習性に関する論文を書いたが、性的行動の部分はあまりに衝撃的だと考えて元の論文から削除し、別の短い論文としてまとめた。こちらは数人の研究者の間でひそかに回覧されただけだった。

 論文を発見した英国自然史博物館(Natural History Museum)の学芸員ダグラス・ラッセル(Douglas Russell)氏は、レビックが「堕落だ」と述べて恐れおののいたペンギンの行動は経験不足からくるものだと説明している。「アデリーペンギンは10月にコロニー(集団営巣地)に集まり繁殖を始める。繁殖期は1~2週間と短く、若いペンギンは経験がないためどう行動すべきか分からない。それが『堕落』に見えた行為に走らせている」と述べている。(c)AFP

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