【6月8日 AFP】「バスソルト(bath salt)」として知られる一連の合成ドラッグは、リラックス効果や激しいパニック発作、けいれんなどさまざまな作用をもたらす。だが、ゾンビのように人肉を食べたくなる欲求も生み出すのだろうか?

 その可能性はあると米マイアミ(Miami)の警察当局は考えている。マイアミで先週、全裸でホームレス男性の顔の大部分を食いちぎり警察官に射殺された男は、バスソルトの1種「クラウドナイン(Cloud Nine)」の影響下にあった可能性があるとされていることから、これらのドラッグに米メディアの注目が集まっている。

 米麻薬取締局(Drug Enforcement AdministrationDEA)のBarbara Carreno報道官は7日、「断言するには毒物検査の結果を待たなければいけない」が、「確かにこういった異様な行動は頻繁に報告されている」とAFPに語った。「これらの薬物はとても危険。1度使用した人が『もう2度とごめんだ。恐ろしい体験だった』と言うのをよく聞く」

■合法的に売られていた合成ドラッグ

 クラウドナインのほか「アイボリーウェーブ(Ivory Wave)」「バニラスカイ(Vanilla Sky)」「ホワイトライトニング(White Lightning)」などの名称で呼ばれているバスソルトには、覚せい作用があるカチノン誘導体が含まれている。

 現在クラウドナインは米国のいくつかの州で禁止されており、麻薬取締局も2011年10月に規制薬物に指定した。だが以前は、ドラッグ用品を販売する「ヘッドショップ」と呼ばれる店や、コンビニ、ガソリンスタンド、インターネットを通じて合法的に購入することができた。

 以前クラウドナインを販売していたワシントンD.C.(Washington D.C.)中心街のヘッドショップで働く男性はAFPの取材に匿名を条件に応じ、「1つ当たり18~40ドル(約1400~3200円)で売っていた」と語った。「ホームレス、弁護士、18歳から75歳まで」とあらゆる種類の人が購入していたという。「奇妙なことだよ。購入者は皆、法に触れずに精神を変容させられると思っていた」

■さまざまな作用を引き起こす

 麻薬取締局の資料では、クラウドナインが引き起こす可能性のある作用として、「興奮、不眠、怒りっぽくなる、めまい、うつ、偏執症、妄想、自殺念慮、けいれん、パニック発作」が挙げられている。リストには「食人行動」は含まれていないが、ホームレス男性の顔をかみちぎって射殺されたルディ・ユージーン(Rudy Eugene)容疑者(31)は当時、バスソルトを使用して興奮状態にあったと警察はみている。

 マイアミでは、クラウドナインの影響下にあったとされる男(21)がひわいな言葉を叫びながらレストランに乱入し、駆け付けた警察官の手をかみちぎろうとした事件も起きている。

 ノースマイアミビーチ(North Miami Beach)市警察は警察官に対し「ホームレスに対応する場合は注意するように」との通達を出し、市民に対してもクラウドナイン使用者を見たらすぐに通報するよう呼びかけている。(c)AFP/Robert MacPherson

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