【6月8日 AFP】「イスラム武装勢力『パキスタンのタリバン運動(Tehreek-e-Taliban PakistanTTP)』が核兵器を取得した可能性がある」、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は政権発足後すぐに安全保障上の究極の悪夢に直面していた――5日に発売された米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)のワシントン支局長、デビッド・サンガー(David Sanger)氏の新著『Confront and Conceal(直面と隠匿)』はこのように述べている。

 同書によると、オバマ大統領は2009年初夏に大統領執務室(Oval Office)で開かれた劇的な会合で、そのような懸念を示す「あいまいな」証拠を告げられた。

 傍受した「パキスタンのタリバン運動」の構成員間の会話にもとづき、同グループが爆弾を保有している可能性があると米情報当局が警告。また米中央情報局(CIA)も、米都市に対する攻撃を示唆する「おしゃべり」を傍受したことを報告した。

 米情報当局周辺ではこの脅威が本物であるかどうかについて、誰も確証を持てなかった。ベテラン専門家の中には、脅威があるとすれば、放射性物質をまき散らす「ダーティボム」の可能性が高いと指摘する声もあった。また米情報当局の高官の中には、傍受された情報の信ぴょう性に大きな疑問があると考える者もいた。だが、パキスタンの核兵器管理に懸念がある中で、誰もこの脅威を無視することはできなかった。

 オバマ大統領は、万が一の可能性を軽視できないとして、必要な場合に備え、核兵器捜索・解体部隊をパキスタンの近隣国に展開させたという。

 緊迫した状況だったが、数日後に脅威は消え去った。パキスタン当局が保有兵器を調査し、所在が分からなくなっている核兵器はないと報告してきたのだ。

 ある政府高官は、オバマ政権発足すぐにこのような核兵器の脅威に直面したことで「われわれ全員の中にその印象が長く残り続けた」と同書で述べている。同書によれば、この出来事以降、米当局はロンドン(London)やアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ(Abu Dhabi)などの中立的な場所で、パキスタンの核兵器当局者と核安全をめぐる会合を定期的に開いている。(c)AFP