【6月8日 AFP】文字と文字の間の空白を広くとることでディスレクシア(識字障害)のある子どもがより速く、より正確に読書をすることが可能になるとの研究が、4日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)で発表された。

 研究は識字障害のある8~14歳のイタリア人54人、フランス人40人の子どもを対象に行われた。文字間隔を(非常に)広くすることで、文字認識の正確性が約2倍になり、また読む速度も20%以上上昇したという。

 研究を率いたのは、パドバ大学(University of Padova)一般心理学科のマルコ・ゾルジ(Marco Zorzi)氏とチームの研究者ら。識字障害のある人がそうでない人に比べて「クラウディング(込み合い)」と呼ばれる現象に影響を受けやすく、文字と文字が接近しているときにその認識が困難になることから、このアプローチが有効であると考えている。

 ゾルジ氏はまた、「われわれの研究は、トレーニングを必要としないまま、識字障害のある人の読む能力を改善するための実践的方法を提供している」と語った。

■識字障害のある子どもにのみ効果

 研究では、通常の文字間隔と広い文字間隔の24文からなる短い文章がそれぞれ用意された。14ポイント(1ポイント=0.353ミリメートル)の「Times-Roman」フォント(字体)が用いられた通常の文章に比べ、文字間隔の広い文章では、その間隔が通常のものより2.5ポイント大きくとられた。(例を挙げると)単語「イタリア(Italia)」の「i」と「l」との間隔は、通常の文章だと2.7ポイントだが、広い文字間隔では5.2ポイントになる。ページ全体の余白部分を多くするために行間も広げられた。

 試験は子どもたちの母国語であるイタリア語とフランス語で行われ、文章の記憶が試験結果に影響しないよう、各試験間の間隔は2週間設けられた。

 試験の結果、文字間隔を広くとった場合、識字障害のある子どもの読書速度が上がることがわかった。さらに、文字認識に最も大きな問題が見られた子どもらに対して改善効果が最も高いこと、そして読書に障害のない子どもたちに対しては何の改善もみられ無かったことから、このアプローチの効果が識字障害のある子どもに限定されたものであることも示唆された。

 研究には仏エクス・マルセイユ大学(Aix-Marseille University)とフランス国立科学研究センター(CNRS)の研究者も参加した。推計約15%の米国人に見られるという識字障害。現時点においてはその治療方法はない。(c)AFP