【6月7日 AFP】「何を食べれば安全なのかと日々自問している。ブタにはクレンブテロールが入っているし、牛肉も羊肉も有害添加物入り。牛乳をあえて飲もうとは思わない」――。

 大半の中国人にとって、健康的に暮らすことは一般常識というだけでなく、ある種の敬けんな行為だ。病気になったら、それは自分の健康を気遣わなかったせいだとみなされる。

 だが、冒頭でマイクロブログ「新浪微博(Sina Weibo)」から引用した嘆きの言葉が示すように、古き教訓はメラミンやカドミウム、殺虫剤、鉛、水銀、二酸化硫黄、その他の微粒子や危険な化学物質が中国の食物連鎖に入り込み、水道や大気を汚染することまでは予見していなかったとみえる。

 汚職にまみれ、規制当局がほとんど機能しないまま30年間にわたって2桁成長を続けてきた中国の工業成長率は、空前のレベルの公害と汚染食品のまん延を招いた。汚染された主な食品には、非情な起業家たちが製造・販売した粉ミルクや穀物酒などがある。

 中国内外の監視団体によれば、中国では毎年小規模デモが多数起きるが、その多くは環境汚染が人々の生活に目に見えて影響を及ぼしたことが要因だ。

 最近まで、こうしたデモが地元以外で注目を集めることはなかった。だがインターネット、特にユーザー6億人に上る中国独自のマイクロブログの登場で当局の規制が困難になり、デモが起きたことが中国全土に知れ渡るようになった。

 食料・飲料スキャンダルが何十件も相次ぎ、数百人もの人々が犠牲になっている状況を知り、中国の消費者は用心深くなったが、やがて不安視するようになり、ついには怒りを示した。

 たとえばクレンブテロールは2007年~11年、中国全土の養豚場で使われていた。クレンブテロールはスポーツ選手が筋肉増強のため使用することで知られるが、畜産物の脂肪を減らして高価な赤身部分を増やす効果がある。

 工業プラスチック製品などに使われるメラミンは、2008年に発覚し中国最大の食料スキャンダルとして世界的なニュースとなるまで、粉ミルクに広く使われていた。粉ミルク汚染では08年1年間で赤ちゃん6人が死亡し、推計30万人が現在も腎機能障害などの健康問題を抱えている。21人が逮捕され、うち2人は死刑となったが、同じような事例は2年後の2010年にも発覚した。(c)AFP/Boris Cambreleng

恐怖の種―中国に満ちあふれる有害物質(2)
恐怖の種―中国に満ちあふれる有害物質(3)

・この記事は、AFPのブログ「Geopolitics」内の特集「Living with Fear(恐怖とともに生きる)」に掲載されたシリーズです。