【5月28日 AFP】ボスニア・ヘルツェゴビナ北西部トゥズラ(Tuzla)のカラブラーシ(Karavlasi)村で17日、ドイツ人の少女(19)を8年間も監禁して家畜のように扱っていたとみられる夫婦が逮捕された。少女がブタの餌を食べさせられたり、荷車を引かされる様子を目撃していた隣人からの通報が逮捕につながった。

 逮捕されたのは、ミレンコ・マリンコビッチ(Milenko Marinkovic)容疑者と妻のスラボイカ(Slavojka Marinkovic)容疑者。警察は事件の詳細を明らかにしていないが、地元テレビが捜査関係者の話として報じたところによると、少女は現在、安全な場所に保護されて手当てを受けているという。

 マリンコビッチ容疑者夫妻が少女を拘束していることを警察に通報した隣人によると、この少女が母親と2人の姉妹とともにカラブラーシを訪れたことは覚えているが、当時は特に注意を払わなかったという。だが、それから数年後、カボチャやトウモロコシなど、容疑者らが飼っていたブタの餌を少女が食べているところを目撃した。さらに、別の日には馬が引く荷車を少女が引かせられているのを見た。容疑者2人は荷台に乗り、馬のように荷車を引く少女を見て笑っていたという。

 この隣人によると容疑者の夫婦はロマ人の家系で、兄弟ら複数の親族が共に暮らしており、頻繁にドイツやオーストリアに出かけていたという。

 この隣人はもっと早い時期に通報しようと試みたが、容疑者らは警察が来ると巧妙に少女を隠したという。少女の姿を1年ほど見かけていなかったが、容疑者らは少女はドイツにいると説明していた。だが今月15日、この隣人は再び少女を目撃。携帯電話で少女の写真を撮影して警察に届け出た。

 だが、オーストリアから戻ったばかりだというマリンコビッチ容疑者の弟は27日、容疑は全くの作り話だとAFPに語った。

 地元メディアによると、少女は母親とともに8年前にドイツからボスニアに移住した。母親はカラブラーシとドイツを数年ごとに行き来していたが、マリンコビッチ夫婦が逮捕されたときにはカラブラーシにいた。母親も、間違ったことは何もなかったと、マリンコビッチ夫婦の容疑を否定している。

 地元メディアは、ミレンコ・マリンコビッチ容疑者がドイツの居住権を得られるよう偽装結婚するために、少女の母親がやって来た可能性もあると伝えている。

 捜査関係者によると少女は森林にいるところを発見され、心身の状態は悪かったという。近隣住民らが少女が泣き叫ぶ声を聞いていることから、警察では少女が容疑者宅を定期的に訪れていた容疑者一家の知り合いらから性的虐待を受けていた可能性もあるとみている。(c)AFP/Rusmir Smajilhodzic

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