【5月11日 AFP】カナダの高校生や短大レベルの学生による優れたバイオ技術研究を表彰する「サノフィ・バイオジニアス・チャレンジ・カナダ(Sanofi BioGENEius Challenge CanadaSBCC)」の2012年の受賞者が8日発表され、最高賞には木材パルプに含まれるアンチエイジング成分を研究したジャネル・タム(Janelle Tam)さん(16)が選ばれた。賞金は5000ドル(約40万円)。

 カナダの高校、ウォータールー・カレジエイト・インスティテュート(Waterloo Collegiate Institute)に通うタムさんは、樹木に含まれるセルロースに強い抗酸化効果があることを明らかにした。

 タムさんが研究したナノ結晶セルロース(NCC)は木材パルプに含まれる極小粒子で、柔軟性や耐久性に優れ、強度は鋼鉄よりも強い。タムさんはNCCを「バッキーボール」(炭素原子60個の球状の集合体フラーレンの別名)と化学的に結合させた。バッキーボールはすでに化粧品やアンチエイジング製品に使われている。

 バイオサイエンス教育の振興機関バイオサイエンス・エデュケーション・カナダ(Bioscience Education CanadaBEC)は、バッキーボールとNCCの結合物はフリーラジカルを「掃除機のように吸い上げて」中和する働きがあると指摘し、「タムさんの抗酸化化合物は将来、体内の有害なフリーラジカルを中和するアンチエイジング健康製品の改善につながる可能性がある」と述べた。

 セルロースはすでに多くのビタミン剤で賦形剤や安定剤として使われていることから、タムさんは、いつの日かNCCがこれらの製品に添加されてフリーラジカルを中和するようになることを期待している。5年前からカナダで暮らしているタムさんは、「商品化されればうれしいですね」と話した。「さらに、NCCが既存の製剤原料に追加され、錠剤やばんそうこう、化粧クリームの添加物として使われることを思い描いています」

 タムさんは、NCCは安定しているので長い時間効果が持続し、ビタミンCやEより優れている可能性があると考えている。「NCCには全く新しい研究分野が広がっていると思います。研究するということは、まだ誰も発見していない物事を見つけ出すようなもので、とてもわくわくします」と話した。

 今年1月にケベック(Quebec)州にオープンしたパルプと紙の生産工場は、世界初の大規模NCC生産プラントとして稼動している。カナダの森林研究機関FPInnovationsは、NCC市場は今後の10年で2億5000万ドル(約200億円)規模に成長すると予測している。(c)AFP