【5月10日 AFP】ブラジル政府は9日、前年3月に起こった福島第1原子力発電所の事故を受け、国内での新たな原発の建設計画を見送ると発表した。

 ブラジルではルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)前大統領政権下で2030年までに4~8基の原発を建設する計画が立てられていた。

 だが8日に開催されたフォーラムでの同国鉱業・エネルギー省高官マルシオ・ジメルマン(Marcio Zimmermann)氏の発言によれば、向こう10年間は新たな原発建設の必要はないという。

 9日に同省より発表された声明の中で、ジメルマン氏は「2020年までの計画では、(新たな)原発の建設は必要なく、想定していない。電力需要は水力発電のほか、風力、火力、天然ガスなどの補完的エネルギー資源により満たすことができる」と述べている。

 その一方でジメルマン氏は「2021年からの新計画でも、私が知る限り、原発(建設)は検討されない」としつつも、長期的にみた原発建設の可能性については否定していない。

 ブラジルのエネルギー研究調査会社「EPE」のMauricio Tomalsquim社長は、「日本での事故を受け、ブラジルだけでなく全世界が分析・評価を中止した」と指摘する。

 Tomalsquim社長によれば、ブラジルのエネルギーミックスにおける水力発電の割合は、この先10年間で75%から67%へと減少する一方、風力や太陽、バイオマスといった再生可能なエネルギー源の割合は8%から16%に増加するという。

 リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)近くの海岸の町アングラドスレイス(Angra dos Reis)にある同国唯一の原子力発電所では、加圧水型原子炉2基が現在稼働中で、出力はそれぞれ65万7000キロワットと135万キロワットとなっている。同原発では、24年にわたる論争の末、前年6月に3号機の稼働に向けた作業が再開された。作業は2015年までに完了し、124万5000キロワットの出力が見込まれている。

 現在、ブラジルでは電力供給の大部分を水力発電でまかなっており、アングラドスレイスの原発の発電量は全体の約3%に留まっている。しかし経済発展による電力不足で、時おり広範囲にわたる停電が発生している。

 南米諸国で民生用原発を所有している国は、ブラジルとアルゼンチンのみだ。(c)AFP